ぽかぽか日和ぽかぽかと暖かな陽気。
そよそよと木々を揺らす柔らかな風。
「ねぇねぇ日番谷くん!」
ウトウトとまどろみの中にいた日番谷はそのはしゃいだ声音に夢うつつから引き戻された。
「……何だよ……」
折角良い気分で眠りにつけそうだったのに、と掠れた不機嫌真っ只中の声を出されたにも関わらず、雛森は動じない。
「見てみてあの雲!」
日番谷とは違い座り込んでいる雛森の腕が日番谷の視界にすっと入り込み、寝転がっている為普段よりも遠く広がる青空に向けて伸ばされた。そして、ある一点を更にピンと突き立てられた人差し指が指し示す。
「鯛焼きみたい!」
ああ、確かに見ようと思えば見えなくもないが、何でよりによって鯛焼き。もっと良い表現はなかったのか。それよりも、あの雲が鯛焼きみたいだと伝える為だけに自分は眠りを妨げられたのか。
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