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    sigureno_3

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    sigureno_3

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    半ロナ 未練の話。くらい。

    たりないふたりその日も、下等吸血鬼を退治人と吸血鬼対策課が連携して退治し、VRCに引き渡したあとだった。夜明けが近い、いちばん深くて暗い濃紺の下、赤と白がだらだらと歩いている。
    「ドラ公にさ、」
    赤い退治人はその夜もいつもと変わらぬしぐさでなんてことないように言う。そろそろおでんがおいしい季節だ、だのと話していた延長線上で、星を見上げながら。
    「みれんをつくれ、って言われたんだよな」
    ――俺はうっかり死にそうなんだと。
    その言葉に半田は隣をみた。腹立たしいほどに整った横顔だった。まるで、にんげんではないみたいに。そんなことが頭を過ぎって、半田桃は思い切り顔を顰める。
    「配偶者でも作れと? 結婚など、お前なんぞにできるのか」
    なにが正解か分からない頭が、未練に紐づけられたありきたりを言葉にする。それを、ロナルドは、不貞腐れた声で子供っぽくかぶりを振って否定した。
    「いや、どうにもそういうんじゃないみたいでさ」
    君が死ぬのを躊躇ってくれるといいのだが、と。
    「死にたい訳ないってのに。訳分かんなくていっかい殺したわ」
    そう言う男に同居人が伝えた意味が痛いほどにわかる。わかってしまった。ロナルドというおとこがそれを理解しえないことも。それくらいに、半田はロナルドの隣にいたし、会話も重ねて、著書を紐解いて、うらんでにくんでいたのだから。
    「お前が馬鹿だからドラルクも不安になるんだろう。馬鹿すぎて」
    眉間の皺をそのままに吐き捨てれば、半田の心情などお構い無しに能天気は真昼の空色を友人へと向ける。
    「おまっ、バカバカ言うけどなあ。兄貴もヒマリも困るだろうし、それに」
    「お前が、」
    はく、と口をわななかせて出た言葉に驚いたのは言った本人だった。眉間の皺が深くなる。
    「俺がなんだよ」
    「死にたくない理由くらい他人を使わず言えんのか、バカめ!」
    問うてはいけないと分かっていた。得られるこたえはきっと、半田桃の理解の埒外にある。
    「俺はそう簡単には死なねえ」
    その予感はあたる。質問の意図ともずれたこたえ。そのひずみがどうしようもなく、腹立たしい。その衝動のまま、胸ぐらを掴む。
    「なってやる」
    「は」
    「俺を、お前の未練にしろ」
    「、えっ、どうしたんだよ」
    困惑の声に我に返った。
    「……っ、愚かにも死ぬなどしたら貴様の墓前にセロリを供えてくれるわ!」
    「なんでだよぉ!」
    半泣きになる愚者を置き去りにして、高笑いしながらダンピールはひとり帰路についた。いつもの新横浜の夜みたいに、なにもかも有耶無耶にしてしまいたかった。
    退治人の顔を、その夜はもう振り返ることはしなかった。
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    ju__mati

    DOODLE七七五のけんと時空の呪専七五01
    ※支部の七七五3Pのけんとが自分時空に戻ったあとの呪専七五の話。短い。
    七海建人は、授業を終えて高専の廊下を歩いていた。灰原は見たいテレビがあると言って先に寮に戻っており、七海は図書室で調べ物をしていた。さすがに腹が減ってそろそろ下校するつもりだったが、横の廊下から歩いてきた人物を見て、足を止めた。向こうも七海に気づいて、「あ」と立ち止まる。
    五条悟だった。すらりとした長身を高専の制服に包み、丸眼鏡をかけた姿にほんの少し違和感を覚える。「こんにちは」と挨拶すると、「ん」と返事がある。どこかぎこちない、と思った。

    昨晩、七海はおかしな夢を見た。やたらリアルで、音も色も匂いもあって、現実としか思えないような夢。その中で、七海は11年後の自分と、11年後の五条に会った。28歳だという五条は恐ろしいほどに外見が変わっていなくて、それでも大人らしい穏やかさと柔らかさを身につけていた。その彼と、セックスをした。

    「ひとり?」

    と、目の前の五条が言った。「はい。ちょっと調べ物をしていたので」と言うと、「ふぅん」と、聞いてきたくせに気のない反応だった。しかし、立ち去るかと思った五条は片手をポケットに突っ込んだまま、七海の方をチラッと見た。
    七海は、この五条に、キスさ 2445

    Sssyashiro

    DONE【展示】書きたいところだけ書いたよ!
    クリスマスも正月も休みなく動いていたふたりがい~い旅館に一泊する話、じゃが疲労困憊のため温泉入っておいしいもの食ってそのまましあわせに眠るのでマジでナニも起こらないのであった(後半へ~続きたい)(いつか)
    201X / 01 / XX そういうわけだからあとでね、と一方的な通話は切られた。
     仕事を納めるなんていう概念のない労働環境への不満は数年前から諦め飲んでいるが、それにしても一級を冠するというのはこういうことか……と思い知るようなスケジュールに溜め息も出なくなっていたころだ。ついに明日から短い休暇、最後の出張先からほど近い温泉街でやっと羽が伸ばせると、夕暮れに染まる山々を車内から眺めていたところに着信あり、名前を見るなり無視もできたというのに指が動いたためにすべてが狂った。丸三日ある休みのうちどれくらいをあのひとが占めていくのか……を考えるとうんざりするのでやめる。
     多忙には慣れた。万年人手不足とは冗談ではない。しかしそう頻繁に一級、まして特級相当の呪霊が発生するわけではなく、つまりは格下呪霊を掃討する任務がどうしても多くなる。くわえて格下の場合、対象とこちらの術式の相性など考慮されるはずもなく、どう考えても私には不適任、といった任務も少なからずまわされる。相性が悪いイコール費やす労力が倍、なだけならば腹は立つが労働とはそんなもの、と割り切ることもできる。しかしこれが危険度も倍、賭ける命のも労力も倍、となることもあるのだ。そんな嫌がらせが出戻りの私に向くのにはまあ……まあ、であるが、あろうことか学生の身の上にも起こり得るクソ采配なのだから本当にクソとしか言いようがない。ただ今はあのひとが高専で教員をしているぶん、私が学生だったころよりは幾分マシになっているとは思いたい。そういう目の光らせ方をするひとなのだ、あのひとは。だから私は信用も信頼もできる。尊敬はしないが。
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