Tシャツが肌にべとりと吸い付く、茹だるような夏の日。ミスタの配信が止まった。
なんの前触れもなく、荷物すら残してアイツは消えた。
ミスタは人一倍仕事に対して真面目だったし、3月に家を探すための休暇だって悩みに悩んでいた。それくらい仕事熱心なアイツが連絡一つ寄越さず消えている。これは何かのジョークだろうか。
この新しい家は、前の家に比べて静かだし配信するにも防音でちょうどいい。ついでにイギリスの中でも回線は抜群にいい方だ。その分家賃が高いのがネックではあるが。
カラカラとゲーミングチェアを転がす。特に意味もなく空になったマグカップに手を伸ばした。ミスタからの引っ越し祝いだった。燃えるような赤色のそれは、いつの間にかお気に入りになっている。配信中の水分補給と称してパソコンの横に置く。
6010