とにかくもう、最悪な気分だった。
この世の何もかもが自分の敵で、味方なんて一人もいないのだ、と──実際はそんな事はないとうっすら知っていたけれど、頑ななまでにそんな妄想を信じていた。それを免罪符にしている間は、不機嫌な振る舞いが許されると思っていたから。逆に言えば、そうとでも思わなければお利口になってしまいそうな自分に嫌気が差していたのだ。
のっしのっしと、普段ならしない歩き方で草木を踏み鳴らし(気持ちとしては、踏み荒らし)訪れた湖は、普段通りに静かで、少しだけ腹のうちで燻る怒りが弱まるのを感じる。正気に戻ってしまう前に、慌てて息を深く深く吸った。
何の為に? それは勿論、吐き出す為に。
「ジェイコブのばあぁーかっ‼︎」
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