雨上がりの献杯歌1.
淹れたてのコーヒーの匂いで目覚める。そんな朝をいとおしく思うようになったのはいつからだろうか。
夜半から製図台とスツールに預けっぱなしの身体は錆びたブリキ人形のようだ。腕を伸ばしグッと力を込めると景気の良い音がする。教令院を卒業し先輩方の下でがむしゃらに働いていた頃はなんてことなかった夜を徹しての作業が、ここ一年でぐっと辛くなってきた。……そろそろもう少しマシな仕事スタイルを身につけるべきなのかもしれない。
同輩や後輩の朗報が届くようになって、ありがたいことにカーヴェに新居の依頼をと頼まれることも増えている。納期も、依頼人の要望も、それほど困難を伴うものではないが、これからの彼らを日々迎える家なのだ。気合が入ってしまうのも仕方がない。
3649