金愛…それは北の顔にはよく似合っている。
目尻に可愛らしい皺が寄っている。
頬に薄いピンクの色が輝いている。
唇に小さなカーブが描かれている。
顔全体に愛情が浮かんでいる。
ほんまに綺麗やな~ってべつに新しい発見でもなくいつものことやけど、と侑は思うが、彼は一生、そして生まれ変わったらその次、その次の次の人生にもこれをずっとずっと見ていたいと思っている。
「何をじろじろ見てんねん」
その唇の動きと、メロディーのように耳に響く甘い声で、恍惚としていた侑は夢のような時間から目覚める。
首を横に振りながら少し鼻歌を歌い、そして次に口から出てきた言葉は正直さしかをあらわせなかった。「北さんの顔には、愛がとても似合ってるなと思っていました」
茶色の狐のような目は少し大きくなってから三日月のような形に変形し、目尻に寄っている皺がより明るく輝いている。
頬は少し上がり、ピンクの色合いが赤に変わっていく。
唇のカーブが広がり、可愛らしい笑い声がその口からもれだす。
「何言うとんねん」瞬きをしてまた目を開き、北は恋人の胡桃色の瞳をみつめた。「この愛は全部お前のためやけど」と当たり前のように言う。とたんに侑は自分の顔に熱が上がっていき、頬と耳の先にとくに集まっていたことを感じた。
「俺と、結婚してください」心の中の言葉はそのままこぼれる。
「はい、する」ためらうのない返事がすぐにでも返ってきた。「お前は俺に何回プロポーズしてると思てんねん、このアホ」少し恥ずかしそうに北はからかう。
侑の顔は今綻びすぎているかもしれない。「ふふ、そうですね…北さんが笑顔で俺に『はい、する』と答えたのと同じ回数ですかね~」
北の笑顔は想い人の笑顔と同じになり、そして侑の顔を包むように手を伸ばした。
その手の薬指には、金のエンゲージリングが光っている。
「もうしょうもうないこと言わんで、はよ俺にキスせえ」
侑は一瞬顔を近づけ、唇を触れさせる。
北の唇は、愛の味しかしなかった。