「それでは、失礼しますね」
「うん、気をつけて」
薄暗く日が昇ったばかりの空。
冷えた空気が頬を撫でる。
お互いありがたいことに忙しくさせてもらってて、たまたま一致した二人のオフ日。
少しでも長く一緒に居たくてついおねだりしてしまい、いささか強引にお泊りしてもらったが、清澄には朝から仕事があった。
始発の電車に間に合うよう、彼を見送る。
駅まで行くよと言ったけど、清澄には玄関までで大丈夫ですと断られてしまった。
普段ならこんな早起きなんて滅多にしない。
きっちり着物を着込んだ彼と、まだ寝間着の俺。
微かに吹いた風が対象的なふたりの髪を揺らした。
「では私は行きますね」
言葉とは裏腹に少し名残惜しそうにこちらを見つめる清澄に思わず抱きしめたくなる。
外だからとぐっと堪えて、俺は清澄が見えなくなるまで手を振った。
部屋に戻ると、急に一人になってしまった実感が湧いてくる。
しんと静まり返った部屋にぽつんと自分だけが存在している。
次に会えるのはいつだろう。
そう考えながら俺は再び布団に潜り込む。
布団の中はまだ二人分の温もりが残っていた。
ばさっと頭まで毛布を被る。
ゆっくり深呼吸をすると、暖かくて優しい清澄の匂いがした。
恋人の残した気配を抱いて、俺はもう一度眠りについたのだった。
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