クイーンサイズのベッドに腰掛けて清澄を待つ。
彼は今バスルームでシャワーを浴びているはずだ。
着慣れないバスローブが肌に当たってがさがさと音をたてる。
握りしめた拳は汗をかいてじっとりとしていた。
俺は、俺たちはこれから、初めての夜を越えることになる、はず。
この場所に来たってことはそういうことだ。
どくん、どくん、と心臓が高鳴る音が聞こえてきそう。
入る前に予想していたより内装は落ち着いてモダンな感じの印象を受けた。
茶色と白を基調とした部屋はまるでモデルルームのようで生活感を感じさせない造りになっている。
実際、この部屋で生活することはないのだろうけれど。
間接照明がぼんやりと枕元を照らす。
明かりを調節するつまみを最大にしても明るくなりすぎない部屋は、やはり“そう”いった目的のために存在する施設なのだなと痛感した。
ベッド横のサイドチェストには行為のためのアイテムを予め準備してこっそり並べておいてある。
いろいろ調べて必要そうなものを持ち込んだし、使い方も頭に入れてきたけど、いまいち自信はない。
なにせ初めてなのだ。何もかもが。
指を絡ませ手を繋ぐことも、小鳥が囀るような触れるだけのキスも、頭が蕩けてしまいそうな大人の口付けも経験した。ここまで慎重に、丁寧に二人で一歩ずつ階段を登り進めてきた。けれど、ここから先はかなり大きな一歩となる。
はああ、と大きく溜息をつく。
緊張、してきた。
思わずベッドから立ち上がり、そわそわと室内を行き来する。
清澄、まだかな、いやまだ来ないでほしい。
気を紛らせるために今朝の朝食なんかを思い出そうとする。目玉焼きとマーガリンを塗ったトースト、それからホットコーヒー。清澄とデートだから慣れないなりに髪のセットも念入りにして、爪も綺麗に切り揃えてきた。どこか最初からこうなるってわかっていたみたいな自分の行動を思い返して、かあっと赤面してしまう。気分を変えようと思っていたのに逆効果になってしまい俺は頭をがしがしと掻いた。
カチャ、と軽い金属音がして、バスルームの扉が開く。
丁寧に畳まれた着物を抱えた清澄が、俺と同じ白いバスローブに包まれて現れた。
上気した頬が熟れた桃のように色づいていて、俺はくらりと目眩がした。
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