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    POIPOI 57

    桜の樹の下には / 鍾タル

    #鍾タル
    zhongchi

    「きれいな桜ですね」
     ざあ、と風を受けて花びらを散らす、一本の木の根元にて。腕を組み、その花を見上げていた青年がこちらを向いた。
    「ああ、そうだろう。自慢の桜なんだ」
     言いながらその幹に触れ、微笑む姿になぜか、背筋を恐怖に似たものが駆けた。いっそ人間とは思えないほどの美丈夫が、うつくしく笑っただけだというのに。
    「……誰かを、待っているんですか?」
    「ああ、そうだ。この桜の花が散るころ、また会いに来ると」
     だから待っている、と幹にもたれかかる青年。まだ若いはずなのに、どうしてこんなにも老人めいた雰囲気をしているのだろう。まるでとても長い間、この木の下でその人物を待ち続けているかのような──
    「……っ、でも本当にきれいだ。桜の樹の下には死体が埋まっている、だからこんなにも美しい……なんて小説もありましたね」
     話しかけたのはこちらだったというのに、話が続かないことがどうしようもなく怖かった。だからそう言った、それだけのはずだった。
    「ああ、その通りだ」
     男は言う。まるで愛おしい者を見つめるように。
    「言っただろう、自慢の桜なのだ、と」
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    yahiro_69

    DONE朝チュンチュンぴーちくぱーちくぴよよよよの鍾タル
    急に始まって急に終わるけどごはんたべるのがメインです 粥っていうか雑炊
    忙しなくピィピィとさえずる鳥の声に、『公子』タルタリヤは眉を寄せながらゆっくりと目を開いた。
    まだ少しぼんやりとした頭で辺りを見回せばそこは見慣れた自室ではなく。
    落ち着いた品のある調度品たちやふわりと優しく香る霓裳花の香に、ここが鍾離の部屋だということを思い出した。

    「(そういえば昨晩は先生の部屋でしようって言ったんだっけ)」

    承諾はされたものの、やや困ったような笑みを浮かべていたのを思い出した。
    日が昇ってからというもの鍾離の飼っている鳥が鳴き続けているが、愛らしいさえずりもここまで続くともはや騒音でしかない。
    だから普段外に宿を取るか『公子』に充てられた部屋でしか夜を過ごさなかったのかと今になってようやく理解をした。
    いやそういうことは先に言ってよ先生。

    「起きたか公子殿、ちょうど朝餉の粥ができたところだ」

    深く溜息をついたタルタリヤが声の方へ視線を上げると、にこやかに土鍋を持って歩いてくる鍾離と目があった。
    甘い香に混じって食欲をそそる卵粥の温かなまろい香りが漂ってくる。
    少々時間感覚がおかしく凝り性のあり舌も肥えたこの元魔神のことだから、きっとかなり手の込んだものなの 2403