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    nae_purin

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    nae_purin

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    鍾タル(現パロ)

    テイワットの記憶がうっすらとあるけど、ほぼ別人格として鍾離と出会って鍾離のことが好きになったタルと、摩耗が進み情緒不安定気味の鍾離が解釈違い起こしながら同棲DV彼氏してるラクガキ

    #鍾タル
    zhongchi

    「違うだろう」
    強く顎を掴まれる。布越しの生暖かい体温が嫌にリアルだった。頬の肉が引き攣るような痛みを訴える。人外の腕力で持ち上げられて爪先が浮く。息を詰めて視線を合わせようとするが叶わない。
    「…わかってるよ」
    かすれた笑い声に乗せてそう言えば、拘束する力が少し緩んだ。
    「ごめんって先生。ていうかさ、凡人は片手で人を浮かせられないよ?」
    「…それもそうか。悪かった」
    「形だけの謝罪はいらない」
    そうか、と鍾離が大人しく引き下がり、その腕から解放されたタルタリヤは首に手を添え軽く咳をした。けほ、けほ、と何度か咳き込んでいると再び鍾離の腕が伸びてくる。反射で構えようとするが、ここで下手に振り払うと痛い目を見るのは過去の経験から学習済みだ。その場にぴたりと停止したまま鍾離の手を受け入れる。
    「跡が残ってしまった」
    まるで惜しんでいるかのような口調。力任せにおもちゃを壊したあとのこどもみたいだ。
    何を言うでもなくただ鍾離の瞳を眺めていれば、やがてその瞳が光を帯びる。
    人に成り切る気のない石珀が揺れる。蜃気楼のように、染み込むようにあやふやになって、輪郭さえ失い、やがてタルタリヤはそれに包まれる。腹の奥がひんやりするような、吐き気を催すような。とても心地の良いものでは無い。然して拒絶することも許されない。
    あぁ全く嫌になる。タルタリヤにはそう感じざるを得ない時間が過ぎた。
    「首に違和感は」
    「ないよ」
    「そうか」
    するりと名残惜し無用な手つきで鍾離の手が離れる。先程まで感じていた首の違和感は消えていた。
    「もういい?」
    「あぁ」
    軽く確認を取り、ひとつため息を吐く。それからタルタリヤと鍾離の近くを見渡して、さらにもう一度。まるで癇癪持ちのこどもでも相手にしている気分だった。
    「もったいない…」
    鍾離を責めるような口調になっても、文句は言われないはずだ。実際鍾離は何も言わなかった。無言でしゃがみこみ、床に拡がった惨状を片付け始める。最後にもうひとつため息を履いてタルタリヤも同じようにしゃがみこんだ。
    先程まで湯気を立てていたはずの食事。うつくしいシルエットを持つ高価な食器。鍾離から送られた箸。わざわざ他国から取り寄せたという高価な机と椅子。
    それらが乱雑に地面に転がっていた。鍾離が食べたいと言ったから作った故郷の料理も、高級そうな絨毯にシミを残すゴミ同然だ。せっかく美味しそうにできたのに、とはさすがに口に出さなかった。
    「……悪かった」
    お互い無言で片付けをしていたら、ぽつりと鍾離がつぶやく。タルタリヤはピタリと手を止めて、鍾離を見ることなく返した。
    「はは、謝んないでよ」
    「……」
    「今回も俺が悪い。そうでしょ?違う?」
    「それは」
    「俺が間違えたから」
    鍾離が黙り込む。この惨状を作り上げたのが鍾離とはいえ、その原因を作ったのはタルタリヤだ。それくらいの理解はある。
    「そうだよね、タルタリヤは、料理を上手くできたからって先生に自慢するようなことはしないし、上手くできたとしても黙って料理を出すだろうね。褒められたってありがとうって笑うくらいかな。それから箸を上手に持てないし、いつまでたっても上達しない。料理の最中に先生に気を取られて鍋を焦がすこともしないし、刃物で手を怪我することだってしないだろう。もし怪我しても絶対先生には言わない。基本的にプライドの高い男だからね、見栄を張りたくって仕方ないんだ。まぁ、そんなところが先生は好きだったんだろうけ、」
    ど、と発する前に、黒い手袋をした手のひらに口を塞がれた。
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    Replies from the creator

    nae_purin

    MOURNINGモブに色々改造されて先生に救出されてほっとするも(まだ公子の威厳ギリ保ってる)こんな体みないで!って絶望して(先生に見られてもう自分が公子に相応しくないって思ってしまって)鬱になってふらっと出た徘徊先で旅人にぼろぼろの姿見られてガン泣きしながら迎えにきた先生に回収されて欲しい、話です。供養。
     鍾離をの洞天を抜け出し、行く先もなく歩く。かろうじて履いたスラックスと、肩にひっかけただけの真っ白のシャツ。見下ろした自分の体は見慣れた傷しかない。鍾離に直してもらったばかりのまっさらな体。治療の際、ひとつひとつ鍾離の指先が辿っていったその傷たちはもうないはずなのに、隠すように振るえる指先シャツのボタンを留める。
     踏みしめた地面に転がる石を感じながら足元を見る。洞天から転がり出た先がどこにつながるのか考える暇もなかった。呆然としたまま辺りを見回す。先ほどから見える木々は黄金に色付き、璃月の地であることは伺える。しかし2人ほどが通れる程度の道は舗装されているともいえず、裸足で歩くような道ではないことだけが確かだ。差し込む光を遮る木の葉が影をつくり道を彩る。木漏れ日の隙間から除く青空は雲一つなく、暖かい。常であれば息をのむ景色だったのかもしれない。けれど、いまのタルタリヤにとって景色がどうなどとは関係無かった。ただ、この道の先を進めば鍾離の視界から少しでも遠くに行けると盲目的に信じているだけだ。足を傷つける小石が意識の端に引っかかっては消えてゆく。
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