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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第二十七回 お題:「キスの日」「振り向くと」
    司視点⇒類視点 両想い
    友情出演:えむ、寧々
    40分オーバーしました

    #類司
    Ruikasa
    #ワンドロ

    演出を寧々と話している類の姿を横目で見ながら、脚本に目を落とす。
    そこに書かれた文字も上手く頭に入ってこず、ひっそりとため息をついた。





    最近、類が意地悪だ。


    どうも、振り向いた際に頬に人差し指を指す、というよくあるやつにハマってしまったらしく学校でも、ショー練習の休憩時間にも、事あるごとにやろうとしてくる。

    怒ろうにも、何故かそれをやる類が矢鱈と嬉しそうで、怒るに怒れない。

    ならば引っかからないように警戒する、という手もあるが
    警戒しようにも、自分の悪い記憶力ではすぐ抜け落ちてしまい、何回も何回も引っかかってしまう。

    そもそも類相手に警戒すること自体が難しい話なのだ。
    大切な、恋人。なのだから。





    どうにも手のうちようがなく、からかわれている感じがする今の状態がモヤモヤしてしまい、最近は演技も上手くいかない。
    当の本人はわかっていないのか、「悩みがあるんだったらちゃんと言うんだよ?」と言う始末だ。





    お前が!!!悩みの原因だと!!!いうのに!!!!







    眺めても全く文字が頭に入らない脚本から目を離し、再度類の姿を見遣る。

    ネネロボの話をしているのか、どこか楽しそうだ。
    …あ。ネネロボから何かが飛び出してきて。寧々が声を上げないながらも驚いている。
    その反応を見て、嬉しそうに笑っている類を、寧々は怒っているようだ。

    驚きは演出に不可欠とはよく言っているけれど、やられている側は溜まったものではないよな。わかる。







    そこまで考えて、ハッとした。



    ……同じように、類を驚かせたらいいのでは?
    いつも類がやっているように驚かせて。その上で今の気持ちを伝えたら、伝わるのでは?


    …しかし、いつもやられていることをそのまま返すのは、芸が足りないよな…。

    そう思いながら、傍に置いていたスマホを手に取る。
    何か、きっかけにできそうなものがないかと、様々な条件をいて、見て回る。

    その中で目に入ったある単語を、思わず凝視してしまう。



    「…これだ…!」
    思わず声に出してしまい、ハッとなって類に聞かれなかったかと辺りを見渡す。
    先ほどの件でがっつりと寧々に説教を受けているようだ。

    聞かれなかったことに安堵しつつ、急遽始まった作戦を成功させるべく、スマホに作成を書き込み始めた。



    その検索画面には、「キスの日」と書かれていた。





    ----------------------






    最近、司くんが変だ。



    何か悩みや困り事でもあるのか、全くショーに集中できていない。

    僕の演出案を試す時は、怪我のことも相まってかしっかり集中できているようだけれど、それ以外は、日に日にどんどん悪くなっていってるのがわかる。

    2人も司くんのことに気付いたようで、えむくんは心配そうに声をかけている。
    寧々は、口では厳しいことを言いながらも、司くんを心配しているのがわかる。

    僕もできるだけ声をかけてはいるけれど、司くんは「なんでもない」の一点張りで。



    …もっと、首を突っ込んだほうがいいのだろうか?
    恋人なのに隠し事をされているようで、もやもやする。









    「だからって私でそのモヤモヤを発散しないでくれる?」
    「はいすみません」

    正座する僕の前で仁王立ちし、説教をしているのは同じショー仲間であり、幼馴染の寧々だ。

    どうにももやもやしていると人のびっくりした顔が見たくなってしまい、色々仕込んでしまう。
    えむくんは程々にしないと着ぐるみさんから苦情が来る(というか来た)から、普段は司くんが被害者なのだが、もやもやの発端にするのもあれだし、ということで寧々に矛先が向かっている。

    寧々も大概僕のこの性格をわかっているから許容してくれているけれど、度が過ぎるとこうして説教をしてくるのだ。


    「いい加減それ以外の発散方法も身につけてよね。…はあ、司もがっつり言ってやればいいのに」
    「うん、考えてみるよ。…それで、なんで司くんの名前が出てくるんだい?」
    「一番それの被害受けているのは司でしょ?それに、前に司に相談された。最近類にしょっちゅうからかわれるって」
    「しょっちゅう…??」

    思い当たることがなく、首を傾げていると寧々はため息をつきながら教えてくれた。


    「ほら、振り向きざまに頬をつつくやつ。最近よくやってるんでしょ?」
    「……ああ、やってるね!でもあれ、からかってやってるんじゃないんだけどなあ…」
    「司にとってはからかってるようにしか見えないんでしょ。それを何も文句言わずに受け続けてるんだから、そろそろ仕返しがきてもおかしくないんじゃない?」
    「仕返し、か…」

    あの司くんがやる仕返しを、想像してみる。


















    「どうしよう絶対可愛いって感想しかでない」
    「そのデレデレの顔どうにかしなさい」


    ----------------------




    次の日の昼。

    フェンスにもたれ掛かりながら2人並んでいつものようにお昼を食べ終わった僕たちは、ショーの機材やスマホで撮った映像を見ながら、演出や脚本に関してあーでもないこーでもないと話し合う。


    それがいつもの流れなのだが、いつもとは少し違った。



    「…で、このシーンがいいと思うんだけれど。……司くん?」
    「っあ、す、すまん!なんだ?」
    「いや…話を聞いてたかい?」
    「あー…すまん。聞いてなかった」

    眉を下げて申し訳なさそうに謝る司くん。これで3回目だ。
    いつもはこの時間くらいは集中することの方が多かったけれど、今日は何故かできていない。

    矢張りここはしっかり言った方が良さそうだ。
    ため息をつきながら画面を消すと、司くんはキョトンとした。



    「…え、続き、見ないのか?」
    「見るよ。見るけれど、今はこっちが重要かな」

    そう言いながら司くんの前に立ち、顔の両脇に両手をつき、司くんの顔を挟むようにする。
    首を傾げていた司くんだけれど、僕のこの行動に驚きながら慌てふためいていた。



    「え?…えっ?あの、類?」
    「いい加減、教えてくれてもいいんじゃないか?」
    「えと、あの、何の話だ?」
    「とぼけても無駄だよ。ここ最近、ずっとぼんやりしてるじゃないか」

    そういうと合点がいったのか、ハッとなりながらも、うー…と言葉を濁そうとする。


    「つーかーさーくん?」
    「うー……わかった、言う!でもちゃんと類も答えろよ!」
    「ん?答える?」




    首を傾げると、司くんは不安げに言い始めた。


    「理由はわからんが…ずっと、振り向きざまに頬をつつくやつ、やってただろう」
    「え?…ああ、やってたね」
    「……それが、原因だ」
    「えっ」

    困惑する僕に、司くんは続けた。



    「やってる理由がわからない。何故か嬉しそうだから怒るに怒れない。でも頻度は矢鱈と多い」
    「え、あ、」
    「俺にとっては理由なくずっとからかわれてるようにしか思えない」
    「あの、司くん、」
    「他にも、頻度はまちまちだけれど、驚かせてきたり、色々やるだろう?嫌だってほどではないけれど…それが凄く、もやもやした」



    悲しげに話し続ける司くんに、想定外の回答がきた僕は内心慌てていた。

    まさか、司くんがそうなった理由が僕にあったとは。
    斯く言う僕もなかなか言わない司くんにもやもやしていたが、本末転倒ではないか。
    …しかも、やってた理由が理由だから、尚更申し訳なくなる。


    ついていた手を司くんの後ろに回し、そっと抱きしめる。
    司くんは、されるがままになっていた。



    「司くん。ごめん、そんなにつらい気持ちにさせていたんだね」
    「類、」
    「ごめん。ごめんね。決して、からかってるとかでやったわけではないんだ」
    「うん」
    「僕は、もやもやしちゃうと人の驚いた顔をみて、発散しようとしちゃうんだ」
    「……、うん」
    「よく寧々に悪癖だって言われていたけれど、確かに君にそんな思いをさせてしまうのなら悪癖以外の何物でもないね」
    「………」
    「今は、それに代わる発散方法が思いつかない。でも絶対に、他の方法を探すから。本当にごめんね」
    「…わかった。でも」

    言葉を続ける前に、司くんは抱きしめていた僕の腕を軽く叩く。
    離して欲しい、の合図だ。僕はそっと手を離すと、司くんは正面から僕の顔を覗き込む。



    「オレも、一緒に考える」
    「…!司くん…」
    「ちゃんとしっかり、代わりになるものを、オレも探すから」


    僕の手を握って、目を見て。そう言ってくれる司くんに、僕は顔が緩むのを感じた。




    「…うん。ありがとう、司くん」


    そう言うと、司くんはいつもの男前な笑顔で笑った。










    ----------------------




    「そういえば、類」
    「ん?なんだい?」



    予鈴が鳴り、急いで片付けていた際、司くんが思い出したように声をかけてきた。



    「さっき、言ってたよな。もやもやするとやってしまうと」
    「ん?うん、言ったね」
    「あれ、頬をつついてたのは違うだろ」


    断言するようなその言葉に、僕の手はぴたりと止まってしまった。



    「…どうして、そう思うんだい?」
    「さっき纏めて言ってしまったからああなったが、頬の方と普段の方だと纏ってる雰囲気とかが全く違うからな」


    案外類はわかりやすいぞ?としてやったりな顔をする司くんに、僕は思わず頭を抱えそうになった。
    確かに理由は違うけれど、正直申し訳なくなるくらいにはくだらない理由なのだ。




    「……あー……。えっと、ちゃんと理由は後で説明するから!とりあえず教室に行こう!」
    「……………………わかった」


    腑に落ちない司くんの声を聞きながら、屋上の階段を降りていく。

    踊り場につく一歩手前で、司くんが声をかけてきた。





    「類」

    その声に振り向くと。

    「ん?なんだい司く」












    視界いっぱいに、司くんの顔が写っている。
    目を閉じているから、司くんの長いまつげがよく見える。
    顔の後ろからは、司くんの手が僕の頭を押さえているのを感じる。



    …何が、起こっている?

    離れた司くんの、赤くなった顔を見て。
    漸く、キスされたのだと、気付いた。





    「…振り向きざまにやると、こうなるんだぞ?」

    赤い顔のまま、してやったりという顔でニヤリと笑う司くん。
    そうか。僕は、やり返されたのか。



    「ちなみに、類が理由を話すまでここから先はお預けだからな」
    「えっ」
    「嫌だったらちゃんと言うんだな!」



    それじゃ!と嵐のように去っていく司くんに、呆然としてしまう。

    授業開始のチャイムが鳴って漸く、僕の意識は戻ってきた。




    「……うん。ちゃんと反省しよう。」


    赤い顔のまま、呟く。
    とりあえず、今日はこのまま授業をサボってしまおう。







    「司くんの頬の柔らかさにハマってしまってやり続けてしまった」という理由を、如何に怒らせずに告げられるかを、考えなければいけないのだから。
















    折角考えてきたのに、理由も含めてえむくんや寧々にも白状することとなってしまい
    怒った女子2人から司くん禁止令が出るのは、この後の話。
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    DONEritk版深夜の60分一発勝負
    第二十一回 お題:「君じゃなきゃ/お前じゃなきゃ」「スポットライト」
    類視点 両想い
    「…他のステージに出てほしい…ですか?」
    「はい」


    それは、ある日の練習終わり。
    えむくんを迎えにきたきぐるみさんから言われたその話に、僕も3人も皆驚いた。





    「ステージを移動して欲しい、という訳ではないのです。
    ○○ステージで一日限定のショーが開かれるのですが、キャストが練習外で怪我をされて降板されてしまいまして。その代役を探していたんだそうです」

    「それで、白羽の矢が刺さったのが僕…だと?」
    「ええ、そういうことです」


    「よ、よかったー…!移動じゃないんだー…!」
    「ああ!俺も正直ドキドキしてしまった…」




    話を聞いて、安堵する3人を見ながら、僕も内心ホッとした。
    僕は、今のステージから移動する気なんて更々ないのだから。

    でも、きぐるみさんの説明には、少し疑問が生じた。



    「…でも、それは何故僕なんです?
    それこそ、主役となり得る司くんや寧々が行ったほうが、経験が積めていいと思うのですが」

    僕のその言葉に、きぐるみさんは言いづらそうに告げた。





    「…先方が探している人材が。男性で細身。且つ…………身長が、180cm以上ある方が好ましいそうで。 3000