どむさぶ顕長 息を切らして走る。道長の通う小学校からずっと走り続けるのは、冬の時期にある持久走と同じような感覚だった。足が地に着くたび、重い刺激を体に受け走れば走るほど疲れが溜まって抜けなくて、息が苦しい。持久走ならば途中でペースを落として行くがそれも出来ない。今の道長にとって一分一秒が惜しかった。
家に帰るはずの道をそれて左へ曲がる。商店街を横目に走り抜け、子供たちが集まる駄菓子屋の前を素通りし、少し古びたアパートにたどり着く。
二階建てのアパートの鉄でできている階段は少しさびていて、敷地内の花壇になってる場所は雑草が生えている。そのアパートの二階の一番隅の部屋に、道長の目的の人物が住んでいた。
とんとん、と階段を駆け上がり、通路を走り抜け、息を切らしたまま背伸びをしてチャイムのボタンを鳴らす。「はーい」と間延びした声が扉の向こうから聞こえた。鍵を開ける音が聞こえ、外へ開く扉が開くのを少し躱して道長はお目当ての人物と対面した。
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