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    こーだ

    @966trrrrkmb

    リンぐだ♀大好きアカウント
    普段はpixivを中心に活動しています
    のそのそと短編小説を書いています
    @trrkmb1011

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    こーだ

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    恋愛感情ゼロなリンぐだ♀小説。https://poipiku.com/1743387/6971744.htmlの続きです(抜粋、全年齢部分のみ)。ꘐの部屋にアレの教えを乞いに行くぐだちゃんの話。
    続きはR-18のため支部をご覧ください。
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18014380

    #リンぐだ
    linenGadget

    指先(抜粋)「マスターが拙僧をお訪ねになるとは珍しいですな。御加減はもう宜しいので?」
     部屋の主である道満は深夜の突然の来訪にも関わらず、Tシャツにスウェットパンツ姿の立香を快く迎え入れた。
    「うん……もう平気。ありがとう」
     招集がかかった道満を迎えに彼の私室を訪ねることは何度かあったが、中へ入るのは立香にとって初めてのことであった。陣地作成のスキルを持つ彼らしく、一歩足を踏み入れればそこには、どこか古めかしくも簡素な畳敷きの和室が再現されていた。ほかの居室とは異なる、柔らかなグラデーションを描く電球色の照明に少し安らぎを覚える。
    「昔のお寺みたいに板敷きの部屋なのかと思ってた。畳、好きなんだね」
     生まれた時代は違えど同じ日本人なのだなと、立香は親近感を抱いた。しかし、道満の笑みはどこか冷ややかだ。
    「ンン〜。もしや、拙僧の生まれた時代は畳が高級で主に貴族の寝具として用いられていたことを御承知のうえで、揶揄からかっておられるのですかな?」
     嫌味が返ってくるとはつゆ思わず、立香はたじろいだ。
    「え……いやいや、そんな深い意味なんてないよ! そもそも、そんなこと知らなかったし……」
     寝具と聞いてまた変な汗まで出そうだったので、心を落ちつけるため背後にある文机を見やった。硯と筆、それに作りかけの呪符が置かれている。奥には漆塗りの高坏たかつきが置かれ、本物の焔が部屋全体に微妙な陰影をもたらしていた。照明の温かみある揺らぎはこれが発生源だったのかと合点がゆく(いつか映画で目にしたきじの尾のような灯芯ではなく、アロマ用の丸いキャンドルを使っているのがいかにも折衷を好む道満らしいなと、立香は微笑ましく思った)。隣りにある人の頭蓋ほどの大きさの香炉からは、うっすらと嗅ぎ覚えのある香気が立ち上っていた。
     香炉から漂ってくる匂い、道満の着物と同じだ……。
     あのときの道満は、彼が今身に付けているのと同じ霊衣をそれこそ寝具代わりに敷いてくれたのだった。またも余計なことを思い出しそうになったので、小さくかぶりを振り、道満に促されるまま座布団の上に正座した。
    「急にごめんね。今夜は、君にお願いしたいことがあってきたんだ。ちょっと頼みづらいことなんだけど、ほかにお願いできる人もいなくて」
     悩んだ挙句、立香はメイヴではなく道満に白羽の矢を立てたのだった。頼みづらい願いと聞き、墨を溶かし込んだような瞳が妖しげに光る。そのような彼の性質も織り込み済みの選択である。
    「ふむ、汚れ仕事というわけですかな?」
     これがヨゴレでなければ何がヨゴレだというのだろうと、ぼんやり考える。
    「ま、まあ……そんなところかな。君には本当に悪いんだけど――」
    「マスター。何を気兼ねすることがありましょうや。貴方はただ、この道満にすべてお任せくだされば宜しいのです。拙僧、貴方のためならば如何なる悪も成し遂げてみせましょうぞ。して、何奴どやつを呪い殺せばよろしいので?」
     ニコニコと立香の二の句を待つ道満。切り出しにくさだけがどんどん増してゆく。
    「ごめん。今日はそういう話じゃないんだ」
    「では、どのような?」
    「その……一人でする方法・・・・・・・を……教えてほしいんだけど」
    「ほほう! 拙僧には頼らず、ただ御身のみで成し遂げられたいと。それはまこと殊勝な心掛けにございます。しかしですねェ、マスター。正直に申し上げて、貴方の魔術師としての才は――」
     何故こんなにも察しが悪いのだろうと頭を抱えたくなったが、それも仕方あるまい。流石の道満も、まさか主から自慰の方法を教えてくれと依頼される日が来るなんて考えもしなかったであろう。
    「そうじゃなくて」
    「ンンン……では、いったい何だと仰るのです?」
    「お……」
    「“お”?」
    「オナニーのやりかた、教えてって……言ってるの!」
     立香はやけっぱちに叫ぶと、うずくまるようにして下を向いてしまった。
    「………………」
    「あの……どう、まん」
     そろりと僅かに顔を上げる。上目遣いに様子を窺うと、黒曜石を真ん丸に見開いた道満と目が合った。魔力供給のときにもこんな表情を向けられた気がする。いわゆる“ドン引き”の顔なのだろうと推察する。恥ずかしさで胸がいっぱいになりながらも、しかし、彼もやはり人の子なのだという妙な安堵感を立香は覚えていた。
    「ヘンなこと言ってごめん! 今のは忘れ――」
     そう言って席を立とうとした立香の手首を、がばりと道満の大きな手が掴んだ。
    「わっ……!」
     肌越しに感じる、指の形、太さ、掌の厚み。立香は反射的に身を竦めた。
    「何方へ行かれると云うのです?」
    「だって…………無理、でしょ?」
     浮かしかけた腰を元通りに座布団へと落ち着けて目配せすると、ようやく道満は手を離した。
    「ンンン……確かに埒外ではあったと申しますか、瞬間的にきゃぱしてぃ・・・・・・を超えましたが、問題ございませんよ」
    「超えたのか」
    「ええ――超えました!」
     道満は目を限界まで細めニコニコと笑った。美丈夫の完璧な微笑である。彼を何も知らない人が目にしたら、決して悪い気はしないだろう。しかし立香は、道満がこのような笑い方をするときはあまり碌なことが起こらないのを知っていた。表情を硬くする立香を無視し、道満は続ける。
    「しかし、解せないのですがァ……何故拙僧に斯様なことを? 確かに一度、魔力供給という形で共寝はいたしましたが……同性の、より適任の方がおられるのでは?」
     まさに! 正論! である。立香はあまりの恥ずかしさに、釣鐘草のように再びこうべを垂れた。
    「ンン〜、そう押し黙られては困ってしまいまする……。どうか。どうか……拙僧にも理解できるように、御説明いただけませんか?」
     わざとらしいくらいの抑揚をつけ、囁くように懇願する男。おそるおそる視線だけを上げると、道満は真新しい玩具――あるいは獲物を見つけたときの猫のように爛々とまなこを光らせ、こちらを見つめていた。立香は気まずさにしずしずと視線を畳の編み目へ戻した。
     絶対面白がってる……。
     しかし、ここまで来てしまってはもう後戻りなどできるはずもない。立香はごくりと唾を飲み込むと、おもむろに話し始めた。
    「……魔力供給のときに…………指で、してくれた……でしょ? あの感じが…………あれから、ずっと……忘れられなくて……」
     顔が熱い。火が出るレベルをとうに超え、噴火と言ってもよいくらいだった。下を向いたままなので道満の反応は分からない。
    「今日もそのこと、思い出しちゃって……。でも……自分では、怖くて…………上手くできなくて……だから、その…………やりかた……教えて、ほしいの――!」
     羞恥で涙目になりながらも思い切ってがばりと面を上げるとそこには、悪事を企んだときによくする邪悪な笑みを浮かべた法師陰陽師――ではなく、上っ面だけの微笑を貼りつけた優面やさおもてが、まるで静止画スチルのように硬直していた。てっきり、自分がこのような回答をすることを道満が期待しているものだと思っていた立香は、思いがけぬ反応に面食らった。
    「どう、まん……?」
     眼前で手を振るが、表情は凝り固まったままである。
     どうしよう……。道満、生真面目だからなぁ……。
     ひょっとしたら、サーヴァントとしての義務感と、マスターである自分に対する個人的な嫌悪感の狭間で板挟みになっているのかもしれないと、不安に駆られる。
    「ごめん……。無理、しなくていいから――」
     立香が申し訳なさに縮こまった、そのときであった。
    「ンフフフ……フフフフ……」
    「道満……?」
     笹紅に彩られた薄い唇が僅かに開き、そこから不穏味を帯びた忍び笑いが漏れ聞こえたかと思うと――。
    「ンンンンゥハハハハハハ、フハハハハハハハ!!」
     突如、地響きのような絶笑へと変わった。けたたましく轟く道満の笑声を前に、立香はただ固唾を呑みそれが終わるのを待つしかなかった。
    「道満、えと、だいじょぶ……?」
     獣のような咆哮が収まり、立香が下から覗き込むように様子を窺う。視線が合った瞬間、道満に顎を指先で押し上げられ、立香は小さく悲鳴を上げた。
    「っ……!」
     指の力は強く、身を捩るもがっちりと交差する視線からは逃れられそうになかった。心臓はバクバクと音を立て体内で大暴れを始めている。
    「ンフフフ……マスタァともあろう御方が、まんまと拙僧の術中に嵌りましたなァ」
    「え……どういうこと?」
    「あの魔力供給の日――拙僧は貴方に一つの呪を編んで差し上げたのですよォ。ええ、理性を揺さぶる呪を!」
     魔術の素養がない立香でもすぐに分かった――真っ赤な嘘であることが。
    「貴方がその身を持て余す劣情に悩み、踊らされ、そして苦しみ抜く滑稽な御姿を望めれば、無聊の慰めになるやもしれぬ……等と、思っておりましたが……よもや、よもや! 恥を忍んで拙僧の処へ 御出座おでましになるとは、滑稽を通り越して、嗚呼……! 何たる無様な御姿でありましょうや!!」
     呵々と高らかに嗤う道満。肌に纏わりついていた汗が身体中の熱を奪ってゆく。あれだけ激しく高鳴っていた胸の鼓動がすっと引いてゆく。
     ああ、また君はそうやって、私の猫の額みたいな平穏を守るために悪を成すんだね――。
     そして一方で、立香はこうも思う。
     どうして自分を貶めてまでこんな嘘をつくんだろう。
     もしかして、私に付き纏われたら、好きになられたら、困るって……思ってるのかな。
     別に、“そんなの”じゃないのに。“そんなの”じゃないから、何も心配しなくていいのに。
     嫌なことは嫌だって、はっきり言ってくれたらいいのに――。
     きりきりと胸が痛む。心臓を天蚕糸テグスでぐるぐる巻きにされ、締めつけられているかのような痛みだった。
    「……ひどいなあ」
     大根役者のように平坦な自身の声。
    「ちゃんと解呪してくれないと、困るんだけど」
     気持ちが籠らないのも無理はなかった。そんなことなど、本当はこれっぽっちも思っていないのだから。ただ、言いようのない寂しさを―― それは道満が主従を弁えんとするがゆえに表出する、決して避けられないものであった――立香は募らせた。
    「申し訳ございません、マスター。この呪はひとたび発動してしまいますと、それが不可能なのですよ。もはや、どうにもなりませんな」
     そもそも呪ではないのだから、解呪できないのは当然である。それでも、道満の口からどうにもならないと聞いて、立香はどこかほっとしたような心地になるのだった。
    「じゃあ、私……ずっと、このままなんだね」
     どんなに長くともあと数日耐え忍べば、この疼きも忘れられるはずだ。道満を無理矢理付き合わせるくらいならその方がましだろう。そう立香は考えた。しかし、彼はここにきて当然のようにかぶりを振った。
    「いえいえ、まさか!」
     そして、立香の顎先にあった指を腕へと滑らせるとそのままぐいと引き寄せた。
    「ひゃっ!」
     そのままぐるりと力任せに身体の向きを変えられ、立香は道満の膝の上で彼に背中を預けるような形になった。薫物の甘い芳香に包み込まれ、頬が、身体の芯が、再び熱を持ち始める。それは先ほどまでのような激しいものではなく、薬剤の副作用が導く微睡みにとてもよく似ていた。
    「理性を失った貴方の御望み通り、拙僧が直々にレクチャーして、熱を鎮めて差し上げましょう」
     道満が耳元で優しく囁く。じゅんと、マグマのように熱い液体が割れ目から溢れ出すのを感じた。
     ああ、分かっちゃった――。
     私、本当はこうしたかったんだ。道満にこうしてもらいたくて、たまらなかったんだ――。
     立香は自身の浅ましさを情けなく思った。道満を慮るふりをしながらその実、主従関係を笠に欲望をどうにかして果たそうとしているだけなのだから。
    「ごめんね」と、道満に気づかれないように唇だけをその形に動かした。




    〈以下続〉
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