本当に聡い少年だ。
いや、齢は30と言っていたから青年……の方が当てはまるのだろうが。
鍋からマグカップへとポタージュを移す姿を眺める。
身長の低い彼のために脚立を買ったが、鍋の中が見えていない。ふらふらと揺れている彼専用のキッチンでも作ろうかと家の設計に考えを巡らせながら口を開く。
「お前の助言で半導体レーザーの開発が軌道に乗った。感謝している」
「うん。五年前の特許申請から論文が出ていなくてずっと気になっていたんだ。誘導モーターの開発はどうだい?」
「軽量化に用いる触媒の目星がついた。くさびの素材を変更するとなるとどうしてもモーターの回転効率が低下していたが、お前が提案した触媒の比率ならば耐熱性や磁束の制御を容易に行える。完成したら……それこそブレイクスルーだろう」
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