生生世世に告ぐ住居とは快適さを求めればそれだけコストがかかる。故に節約を掲げた際に手っ取り早く、一番効果がでやすいところでもある。風呂ナシでいくら、トイレ共同でいくら、築ウン十年木造アパートでいくら…といった具合だ。人が眉を顰めそうな条件であっても妥協は時として必要である。
苦学生である彼は家賃3万円ぽっきりのアパートを借りていた。その安さにどんな劣悪物件なのか…と思うだろうが、なんてことない普通の賃貸だ。
たしかに築年数を感じる建物ではあるが、ユニットではない風呂とトイレが付いてこの値段は破格と言って過言ではない。近隣住民に問題があるのかといえばそうでもなく、ご近所さんと気軽に話せるような穏やかな温かみのある町であった。
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