囚人 囚人服が縞模様だという習慣は、とうに廃れたのではなかったか、と蜜柑は抗議した。店長はこちらに背中を向けてドリンクの在庫を確認していたが、分かってないなあ、と呆れたように言うと、顔だけでこちらをチラリと振り返る。
「お客さんはね、別にリアリティを求めて来てるわけじゃないの。雰囲気がそれっぽいってことが、大事なわけ」
「だったら余計、縞々の服なんかじゃなくて、グレーのTシャツだとか、そういう服の方がしっくりくるんじゃねえの」
服の裾を引っ張りながらも、ままごとめいた状況を面白がっている様子の檸檬が口を挟む。
「あのねえ。それっぽいっていうのは、アイコンなわけ。分かる?それっぽさっていうアイコンがあって、それに則ってこそ成立するものなの。雰囲気が大事だって、さっきも言ったでしょ。本格的だったって、楽しくないわけよ」
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