夏休み 複数人で暮らす時に、不便で困る場所はトイレ、リビング、そして朝の洗面所だ。時間のない朝は誰にとっても同じように訪れ、そして、忙しい時間は大抵の場合、被る。そうなったら、お互いの距離感を測り、気を使いながら支度をするしかない。例えば、洗面台を使う前に、キッチンに行ってお湯を沸かす、といった日頃一番にやらない行動をとったりして時間を調節し、場合によっては洗面台の使用を諦め、代わりに流しを代用することもあった。
蜜柑も檸檬も、最初は煩わしさに閉口した。しかし、よくよく考えてみれば、洗面所が混雑するのは、水道を複数人で使おうとしているためだ。洗面台の前に二人で陣取ったとしても、一人ずつ水を使えば困ることはない。そうして生活しているうちに、自然と二人は同時に洗面所を使用する術を身に付けていた。こうして他人の部屋に居座って一週間もすれば、嫌でも慣れるものだ。
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