ハロウィン第一話 秋の夜の冷え切った空気は足先からじわじわと体温を奪っていく。
耐えきれずに目を開けた。枯れ草の増えた河原は寝心地が悪かった。枯れ果てているくせに、チクチクと尖った葉先が薄いシャツや、靴下とスラックスの隙間を狙っているかのように刺さってくる。よく見れば、小さな人影が皮膚を狙って、枯れ草を槍のように構えて突き刺してきているのだ。軽く手で払うと、笑いながら草むらに消える。
風が強く吹くと、どこに隠れていたのか、大量の虫が飛び出てきた。キリギリスの長い触覚が風に吹かれ、そしてキリギリスの背の上にも人影が見えた。こんなに小さなものが人間である訳がないのだから、人影というのも的外れなのだろうが、他の呼称が分からない。小さな生き物は触覚を手綱のように引き、器用に昆虫たちを操る。
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