Making Love「イサミ―!」
食堂内にヒビキの咎めを含む声が反響し、スミスの隣で食事中であったイサミがびくりと肩を竦めた。
「Hey,ヒビキ。どうかしたのか?」
即座に標的を認め、勢いよく駆け寄ってくる彼女からイサミを背中に庇うようにして立ち上がり、スミスが声を掛ける。第一声は叱り声であったが、スミスの目前で脚を止めた彼女は呆れた表情をしている。怒っている、という訳ではないようだ。
「スミス、これ見てよ」
「?」
ヒビキは自身が右手に持っていた物体を差し出した。全体が黒色で統一されている、何の変哲もない一本のボールペンである。
〝これ〟がどうして先程の大声に繋がるのか。理解が出来ずにヒビキへ問いかけようとしたスミスであるが、ヒビキがもう片方の手で指差したボールペンのクリップ部分を見た瞬間、スミスは全てを理解するのであった。
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