あの子と僕/夜明け[リバミファ]――――翌朝。
「……っ…」
窓から差し込む朝日の眩しさに起こされた。
どうやら吹雪はすっかり止んだようだ。
「そうだ、ミファーは……」
「………ん…ぅ…っ……」
弱々しく身じろぎするミファーの頬は発見時より血色がうんと良くなっていた。懸命な介抱の結果、低体温症はすっかり治ったようだった。
「……んんっ…あれ?…リー、バル…さん……?」
数分遅れて、ミファーが目を覚ました。まるで花が綻ぶような彼女の美しい目覚めに一瞬目を奪われる。
「!」
だがそこで自分が裸であることを思い出した。
「こっ、これは、その…っ!」
反射的にベッドから飛びのきそうになったが、ミファーにやんわり止められた。
「……分かってる。私を…助けてくれたんだね」
「ま、まぁ、そうなるかな…」
「ありがとう、リーバルさん」
「ど、どういたしまして」
腕の中にいるミファーを直視出来ず明後日な方向を見ながらそう濁せば、彼女はホッとしたように微笑んでまたその小さな口を開く。
「ねぇ、もう少しだけこのままでいさせて?」
「あ、あぁ…構わないよ」
ミファーは心底安心したように僕に体を預けてきた。
「あぁ、あったかい…」
その姿は親鳥に甘える雛のようだった。
「……えっとその、昨日は折角来てくれたのに何も返事できなくて……すまなかった」
ミファーをゆるく抱きしめたまま、昨日の事を謝ると彼女は首を横に振った。
「ううん、いいの。私こそ急に村に押しかけてきて迷惑だったと思うし…」
「迷惑なもんか。ただまさか僕のことあんな風に思ってるとは思わなかったから、驚いただけなんだ」
「本当に…?」
不安げに首を小さく傾げるお姫様を安心させたくて、その頭をそっと撫でた。
「ああ、誓って嘘じゃない」
「……そっか。なら良かった」
ミファーは少しだけ驚いた顔をしたが、すぐまた優しく微笑んでくれた。
それだけで暖かな想いが心から溢れ出てくるようだった。
「――それで、昨日ミファーが言ってた事についてなんだけど……その、僕はまだ君と…っ」
そこまで言って、嘴に人差し指を押し付けられた。
「無理に言葉にしなくていいんだよ。ここまでして私を助けてくれた事…それだけで十分気持ち、伝わってるから」
言いながら、ミファーは僕の頬をそっと撫でる。僕を安心させたくてそうしたようだった。
「じゃあ…その……」
「うん。改めてこれからもよろしくね、リーバルさん」
「こ、こちらこそ」
静かなやり取りをしてる間に朝日が昇っていく。まるで僕らを祝福するような暖かな光だった。