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    onsen

    @invizm

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    onsen

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    クロラム
    ハロウィンのほんのりクロ→ラムです。

    初出2021/11/3 支部

    ##怪ラム
    #クロラム
    chloroform

    秘密のジャックと黒猫と カボチャを三つ抱えて戻れば、細すぎるシルエットをマントで隠したジャック・オ・ランタンがおどろおどろしげに出迎えてくれたので、とりあえずスルーして台所へと向かった。見送られた時はミイラ男だったはずなのにいつのまに着替えたんだろう。
    「何着用意したんですか?」
    「基本4着に早着替えバリエーションが2枚、あとアンコール用のTシャツ」
    「アイドルのコンサートですか。だいたいアンコールってなんですかアンコールって」
     構って欲しそうに横をついてくるからため息をつきつつ尋ねれば、動かないはずのカボチャの面がドヤ顔に変わったように見えて若干イラッとした。
     フル稼働してるオーブンレンジの熱気がこもって、十月の末だというのに台所はどこか生温い。エコバッグからカボチャと砂糖と生クリームを取り出してふと隣を見れば、そこには吸血鬼姿の先生がにやにやと笑っていた。
    「!?」
     ぎょっとした顔に満足したのか、全力で得意顔の先生に悔しさをおぼえる。ふざけたカボチャの面の下には既に牙がスタンバイしていて、マントは裏表でデザインが変わる仕掛けか。早着替えがあると聞いていたのに。
    「どうだ! びっくりした? びっくりしたよな?」
    「……いたずらしたってことは、お菓子はいらないんですね?」
     厳密にはまだお菓子になっていないし、だいたいこれをお菓子にするのは先生なのだけど。
     カボチャを持ち上げてすっと距離を取れば、悪かった、それがねえとガキどもになにされっかわかんねぇんだよ、とすぐ下手に出るものだから、気を削がれてしまう。
    「ありがとなクロ。重かったろ?」
    「いえ、別に」
     嵩張っただけで重さは大したことはない。ただ、エコバッグの持ち手の部分が少し引き伸びたような気はして、いつ壊れるかの緊張感はあったけど。
     先生が昨日から準備していたお菓子は思わぬ来客続きで午前中にあらかた捌けてしまって、夕方集団でやってくるだろう子供たちの分はとてもとても足りそうにない。最初は夕方にお菓子だけもらいに来い、と言われていたけれど、朝から顔を出していてよかった。
    「手伝いますよ」
    「んじゃカボチャ割って種とワタ取り頼む」
    「割れば良いんですね?」
    「……包丁使えよ?」
     手を洗って戻ってくる間に吸血鬼からいつものエプロン姿に更に変身していた先生は、僕にカボチャを任せると、ボウルに卵を割り入れた。以前はおでこで割っていたけれど、最近は平たいところで割るようになった。きっと他にも、以前とはやり方を変えたことがあるんだろう。僕のために。僕がいるから。
    「ん、どした?」
    「いえ」
    「包丁持ってる時に余所見すんなよ?」
     先生の手を凝視していたのに気づかれて、慌てて視線を自分の手元に戻した。

     オーブンレンジが仕事をしてくれてる間に先生が僕に渡してきたのは、黒猫の着ぐるみだった。いろいろと不服なのだが、どうやら夜なべしてこれを縫ったらしい先生の残念そうな顔を見てしまったら、着ないわけにいかない。渋々着替えていると、仮装は身を守るためなんだかんな、と台所から声がした。
    「人間のガキだってバレたら、変なのが連れて行こうとしちまうんだよ」
     身を守るために、正体を隠す。本名は知られない方がいい。出会ってすぐの頃、僕に「クロ」なんて呼び名をつけた時に、先生が言っていたことを思い出す。
     先生の本当の名前を、僕は知らない。
     先生が何から身を守ろうとしているのかも、僕はまだ教えてもらっていない。
    「着替えたら冷蔵庫にクロの分のおやつ入ってっから、食っていーぞ」
    「ありがとうございます。……ラムネ先生」
    「ん? 改めてどうした?」
     僕が知っているのは、ここまでだ。
     いつか。僕が先生の隣に並び立てるようになったら、知ることができるんだろうか。
     黒猫の絵がチョコペンで描かれたカボチャのプリンを口に運びながら、まだ手の届かないその背中を見つめた。
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    onsen

    DONEクラファ仲良し
    クラファの3人が無人島で遭難する夢を見る話です。
    夢オチです(超重要)。
    元ネタは中の人ラジオの選挙演説です。
    「最終的に食料にされると思った…」「生き延びるのは大切だからな」のやりとりが元ネタのシーンがあります(夢ですが)。なんでも許せる方向けで自己責任でお願いします。

    初出 2022/5/6 支部
    ひとりぼっちの夢の話と、僕らみんなのほんとの話 --これは、夢の話。

    「ねえ、鋭心先輩」
     ぼやけた視界に見えるのは、鋭心先輩の赤い髪。もう、手も足も動かない。ここは南の島のはずなのに、多分きっとひどく寒くて、お腹が空いて、赤黒くなった脚が痛い。声だけはしっかり出た。
    「なんだ、秀」
     ぎゅっと手を握ってくれたけれど、それを握り返すことができない。それができたらきっと、助かる気がするのに。これはもう、助かることのできない世界なんだなとわかった。
     鋭心先輩とふたり、無人島にいた。百々人先輩は東京にいる。ふたりで協力して生き延びようと誓った。
     俺はこの島に超能力を持ってきた。魚を獲り、木を切り倒し、知識を寄せ合って食べられる植物を集め、雨風を凌げる小屋を建てた。よくわからない海洋生物も食べた。頭部の発熱器官は鍋を温めるのに使えた。俺たちなら当然生き延びられると励ましあった。だけど。
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    onsen

    DONE百々秀

    百々秀未満の百々人と天峰の話です。自己解釈全開なのでご注意ください。
    トラブルでロケ先にふたりで泊まることになった百々人と天峰。

    初出2022/2/17 支部
    夜更けの旋律 大した力もないこの腕でさえ、今ならへし折ることができるんじゃないか。だらりと下がった猫のような口元。穏やかな呼吸。手のひらから伝わる、彼の音楽みたいに力強くリズムを刻む、脈。深い眠りの中にいる彼を見ていて、そんな衝動に襲われた。
     湧き上がるそれに、指先が震える。けれど、その震えが首筋に伝わってもなお、瞼一つ動かしもせず、それどころか他人の体温にか、ゆっくりと上がる口角。
     これから革命者になるはずの少年を、もしもこの手にかけたなら、「世界で一番」悪い子ぐらいにならなれるのだろうか。
     欲しいものを何ひとつ掴めたことのないこの指が、彼の喉元へと伸びていく。

     その日は珍しく、天峰とふたりきりの帰途だった。プロデューサーはもふもふえんの地方ライブに付き添い、眉見は地方ロケが終わるとすぐに新幹線に飛び乗り、今頃はどこかの番組のひな壇の上、爪痕を残すチャンスを窺っているはずだ。日頃の素行の賜物、22時におうちに帰れる時間の新幹線までならおふたりで遊んできても良いですよ! と言われた百々人と天峰は、高校生の胃袋でもって名物をいろいろと食べ歩き、いろんなアイドルが頻繁に行く場所だからもう持ってるかもしれないな、と思いながらも、プロデューサーのためにお土産を買った。きっと仕事柄、ボールペンならいくらあっても困らないはずだ。チャームがついているものは、捨てにくそうだし。隣で天峰は家族のためにだろうか、袋ごと温めれば食べられる煮物の類が入った紙袋を持ってほくほくした顔をしていた。
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