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    遊兎屋

    @AsobiusagiS

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    遊兎屋

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    #宿伏
    sleepVolt

    宿伏ワンドロライ
    Dum/Subパロ
    伏黒未成年
    (所有欲/スパダリ)


    始まりは所有欲



    「お前が欲しい」
    そんな不躾な言葉を吐いた男は幾つも歳の離れた男だった。
    情報を付け加えるとすれば、同級生の虎杖の兄。
    働かなくても食っていける程の稼ぎがあって、体格に恵まれ女性にも困らない容姿をしていて、そしてDomだった。
    虎杖の家に遊びに行った際、家から出てくる男が少し草臥れた様な表情で虎杖と軽く言い合いをしていて、桃色の髪の毛は遺伝なんだなぁ、なんて何となしに考えて視線を向けていた。
    きっと虎杖は俺がSubだと気付いてたのだろう…
    背中に隠す様に位置取られた俺に、高級そうなスーツを着こなした男がこちらに気付くのが遅れた。
    それから、虎杖に興味を失った様にスッと逸らされた視線がこちらに動き、目が合ったと思った瞬間に面倒臭そうに歪められていた目が見開かれて、強い目力で俺を見下ろしてくる。
    威圧感を感じて思わず後ずさった俺を逃がさないとばかりに手首が掴まれて冒頭の言葉が落とされた。
    急な展開に固まる俺に、何を思ったのか手を離した男は、自身のポケットから名刺を出し、ペンで何やら書いたかと思えばそれを差し出して来た。
    恐る恐ると受け取った俺に満足そうに目を細めた虎杖の兄はそれから直ぐに電話に急かされる様に離れていった。

    「ぜぇぇぇったいにやめた方が良い!!」
    あいつだけは駄目だ、碌な奴じゃ無い、伏黒が傷付く、何されるか分かんねぇ!
    そう言って捲し立てて来た虎杖は実の兄であっても良いところは一つもないと言う。
    関わらない方が良い。
    心配そうに俺の瞳を覗き込んでくる虎杖は優しい奴だ。
    Normalだから Subのバランスを整える事は出来ない。Subが依存するのはDomにだけ。
    それが分かっているから、こうまで心配してくれる。
    けれど、俺から名刺を取り上げるわけでもなく、ただ危ないから気を付けろと言ってくれる。
    最近不調が続いてるのがホルモンバランスの崩れが原因だと虎杖も気付いてる。
    結局、虎杖には会う会わないは伝えず名刺だけを鞄の中にしまい、元々の目的だった課題を終わらせに掛かった。



    "そろそろ本腰入れて探しな…パートナー"

    思い出す様に浮かんできた声は保護者代わりに面倒を見てくれている後見人のもので、俺が初めて会ったDom…
    日常生活の中で遊び程度のコマンドを使って騙し騙し相手してくれていた男は、流石に最近の不調に目を瞑っていてくれなくなった。
    DomとSubのプレイは軽いものから重いものまで様々で、生活の中での小さなコマンドでもそれなりに効果がある。
    けれど、そう言ったものは軽いものでSubやDomの欲求に対して絶対的に足りない。
    両者が信頼し切ってリラックスして行うプレイが10だとすれば、軽微で小さなそれは1かせいぜい2だろう。
    プレイをしたく無いと言うわけでは無い。
    健康面を考えても、やらなければならないものだと思う。ただ、何も知らないDomに首を垂れて足元へ媚び諂う行為に嫌悪感があるだけ…
    生まれてこの方自分の性別と向き合うのが下手くそで、後見人からの軽微なコマンドと薬でなんとか凌いできた。
    けれど、最近になって抑え込めていたはずの欲求は増すばかりで、薬の効果も薄く、不眠になり始めた。
    食欲も無く、倦怠感がある。
    どうしたってプレイから逃げられない現状に、渡された名刺を引っ張り出す。
    最近はマッチングアプリでプレイ相手を募ったり、そう言ったホテルへと行って相手を探す人達が多いと聞く。
    けれど、全く会ったことのない男に会って直ぐに命令される事を考えると身がすくむ。
    名刺の裏面を見れば、殴り書きではあるけれど整った字が住所と携帯番号を記していて、大柄な男を思い出す。
    背に腹は変えられない…
    あっちから欲しいと言って来たんだ、悪い様にはされない筈だ。



    「……」
    「そんなに畏まるな」

    草臥れた様に見える表情は以前あった時とあまり変わった気がしない。
    名刺を見て書かれた場所へと訪れて一等地に立つ、殊更大きなマンションを見上げた時の俺の気持ちを考えてほしい。
    コンシェルジュのいるマンションのエントランスでどうしたら良いか分からない俺の気持ちを味わって欲しい。
    一応アポを取った方が良いのだろうかと悩んで虎杖に相談した時、苦虫を何十匹と潰した様な顔をしながら、在宅が多いから大丈夫だと伝えられたのを信じて来てみたけれど、これならちゃんと電話してアポを取るべきだった。
    オートロックを開けた時のあの無言は何だったのか、今更聞きたくても聞けない。
    インターホンを押して、広く物が少ない部屋を案内されてリビングのソファに腰を落としたけれど、きっとぎこちないのだろう。
    小さく笑った大人の男が2人分のコーヒーカップを手に戻ってくる。

    「俺の名は知っているのか」
    俺の前にカップを置いた後、ゆったりと1人用のソファーに腰掛けた男が肘置きに肘を突き、顎を擦りながら聞いてくる。
    「…虎杖、宿儺」
    「宿儺で良い」
    名刺を貰ってるのに今更…
    そう思いながらも恐る恐る名前を呼べば、少し嫌そうに眉を寄せてからあっけらかんと言ってのける。
    「……宿儺」
    「ああ、それで良い」
    歳上の男、しかも地位も権力も全てが遥か雲の上の人物を呼び捨てにするのはどうかとも思ったけれど、それで良いならそうするまで。
    試す様にボソリと呟いた言葉に、宿儺は満足そうに頷いて言葉を落とす。
    小さく頷きながら向けられた言葉にほわっと暖かさを感じて少し驚く。
    コマンドを聞いた訳じゃない。
    プレイをした訳でもない。
    それなのに少しの褒めを含んだ言葉がじんわりと響いてきて、思わず宿儺を見上げる。

    「まずはsafe wordからだが…」
    俺の様子に気づいてない様な男はカップを口に運びながらチラリと俺に視線を向ける。
    「…Help」
    まるでコマンドの様なその言葉はきっと普段使わない。追い込まれた時、口に出すのならこれが良い。
    「けひ、良いsafe wordだ」
    まただ…
    じんわりと暖かい感覚が生まれて溶けていく。
    「プレイでNGはあるか?」
    「…ちゃんとしたプレイはやった事ねぇ、けど、痛いのとか…苦しいのは…嫌だ」
    「分かった」
    すんなりと頷く宿儺に、此処まで聞き分けがよく、Subの言う事を聞いてくれるものなんだなと感心する。
    俺の知っているDumは少ないけれど、ニュースで聞く事件や事故、その他に知識として入れている内容ではどうしたってDumは恐ろしいものだと認識してしまう。
    これから初めてのプレイをするんだと思えば、こくりと喉が鳴り、この男に委ねる自分の身を按じる。

    「伏黒恵」
    「あ…」
    少しぼんやりと意識が逸れていたからから、突然宿儺に名前を呼ばれてパッとそちらへ顔を向ける。
    コマンドを聞き逃さない様に、それはSubの本能なのかも知れないけれど、名前を呼ばれただけでドキドキと脈打つ心臓が五月蝿くて、思わず膝の上で手を握る。
    「ふっ…」
    俺の過剰なまでの反応に目を細めた宿儺がカップをゆっくりと机に置いて立ち上がる。
    俺は宿儺から目を離せずにいて、俺の方へ歩いてきた宿儺が手を差し伸ばしてくるのをジッと見つめてしまう。
    「Come」
    「ッ…」
    手を差し出されたそれに震える手を伸ばせば大きな掌が俺の手を包み込む。
    単純なコマンド、来いとだけ伝えられた身体は素直に宿儺に手を引かれて後ろを着いていく。
    こういうものなのだろうか…?
    来いとだけ命じて、Dumは先に行ってしまうものじゃないのか?
    Subに恭しくと手を差し伸べるものなのか?
    比較しようにも子供の様にダブルピースでヘラヘラと笑うDumしか思い浮かばなくて、頭の中はこんがらがる。
    温かい手に掴まれているからか、冷え切った指先がじんわりと熱を吸収して徐々に冷えが取れていく。
    家の中を歩き、目的の部屋に着いたのか手が離される。

    落ち着いた雰囲気の寝室…
    宿儺の身体が大きいからか、それに見合う大きなベッドとチェストボード、間接照明が小さく点いていて、睡眠に必要な最低限の物しか無い空間がなんだか大人の雰囲気を醸し出していて、そこへ足を踏み入れるのをたじろいでしまう。
    そんな俺から手を離した宿儺は寝室の大きなベッドに腰掛けて、俺を見つめてくる。
    どうすれば良いのか迷っている俺に宿儺が薄く唇を開くのがスローモーションの様に見えた。

    「Kneel」

    息が詰まって、ビリビリ震える感覚が背筋を走る。
    コマンドに従わなければ…
    そう思うと同時に、足が進む。
    初めてのコマンド、初めてのプレイ、初めてのDum、初めての場所…
    全部が経験したことの無い事で自身のSub性が揺さぶられてる気がする。
    「ッ、は…っ、ぁ」
    ふらふらと宿儺の目の前に行けば、腰が抜ける様にストンと身体が落ちて宿儺の足元へへたり込む様に座る。足を折り曲げ手を床につく。
    どうしたって屈辱的な格好なのに、そうしたくて堪らない。
    理性と本能が頭の中で押し合いをしていて苦しい。
    息を漏らす俺の頭に大きな掌が乗って、意識が逸れる。

    「good boy、良い子だ恵」
    「あ…っ」

    顔を上げれば、穏やかな目をした宿儺が俺を見下ろしていて緩い手つきで頭を何度も撫でられる。
    低く少し掠れた声が堪らなく気持ちよくて、その声で褒められたのだと理解した瞬間にぶわっと溢れんばかりに嬉しさと快感が押し寄せてくる。
    「ッ、ッ、宿儺」
    「まだまだ序の口だろうに…先が思い遣られるなぁ」
    言葉とは裏腹に嬉しそうな、楽しそうな表情を浮かべる男を見上げていれば惚ける俺の手が引かれてベッドの上へと促される。



    「Roll」

    低く掠れた大好きな声がコマンドを紡ぐ。
    言われた通りにベッドへころりと身体を転がし、仰向けになり、委ねる様に力を抜いてDumを見上げる。
    初めて宿儺とプレイした日、これでもかというほど優しく身体が溶けてしまうんじゃ無いかと思う程にSub性を満たされた。
    あの頃と比べて変わった事とすれば、お互いに歳をとって、中学生だった俺は高校生になった。
    このシンプルな寝室に俺用の枕が増えて、カーテンの色が変わって、閉じられたクローゼットには俺の着替えも詰まってる。
    投げ出した身体に大きな身体が覆いかぶさってきてベッドが小さく音を上げる。

    「あんたは俺に、尽くしてばっかりだな」

    今日だって家に帰れば好物の生姜焼きが用意してあってお風呂も沸いていて、一緒に入って頭や身体を洗われて、今こうして愛されるためにベッドへ寝転がってる。大きく分厚い暖かい手が俺の頬をするッと撫でて、言われた本人は目を細めて小さく笑う。

    「…本当にそう思うのか?」
    「ぇ?うん」
    「ケヒッ…まぁ、そういうDumもいる。」

    含みを持った言葉に眉を寄せていれば話題を変える様にキスが落ちてきて、ちゅっちゅっとリップ音を立てて肌に吸いつかれる。
    優しい手が首筋に回って擦り付いてくる宿儺の髪の毛が擽ったくて小さく笑いが溢れる。
    大きな犬が戯れあってくる様な可愛い接触に宿儺の髪の毛をやんわりと撫でれば、ちうっと強めに首筋に吸い付かれ、宿儺の顔が離れていく。

    「恵、kiss」

    宿儺のコマンドに、満たされる。
    欲しいと思ってくれている。愛されてる。大事にされてる。欲しがられてる。
    じわじわと広がる多幸感に、宿儺の首に手を回して、案外に柔らかい唇に食いつく。
    「ん…っ」
    何度か啄んでからべろりと唇を舐めれば、直ぐに薄らと唇が開いて舌が招かれる。
    熱い口腔内に舌を差し込めば分厚い宿儺の舌に当たり、それを絡めるように舐め弾力のある絶妙な感触を楽しむようにキスをする。
    舌の先をぢゅっと吸い上げたり、綺麗に並んだ歯をなぞったりとすれば、微かに宿儺から息が漏れて、それが堪らなく嬉しくてコマンドに従うのとはまた別にキスを仕掛けるのが楽しい。

    「ふ…ぁ、、、んッ、ん」
    口腔内から広がる快感に身体が熱を帯び始める。
    宿儺からは動きの見られないキスは楽しいけれどどこか物足りない。

    DumとSudのパートナーは必ずしもイコール恋人ではない。
    パートナーで恋人という関係が少ない訳でもないけれど、俺と宿儺は違う。
    中学の頃に出会ってパートナーになり、際どいコマンドはいくつかあったけれど実際に宿儺が俺に手を出してきた事は一度も無いし、未だに清らかな関係が続いている。
    キスはどうなのかと言われれば、宿儺の中でこれは親愛のキスであって、そういった俗欲の何かとはまた別なんだろうなと思う。俺は違うけれど。
    キスをしながらぼんやりと自分の中に溜まっていく性欲を自覚していれば宿儺の大きな掌が俺の後頭部を撫でて首筋を掴む。
    時折そうして頸から後頭部を支えるように撫でる宿儺が今日はそのまま俺を抱き起こして向かい合うような体勢を取る。

    「ん…?ぅ、宿儺?」
    折角rollしたのだからそのまま押し潰す様に抱いてくれれば良いのに、と。
    そう思うのはSudの性なのか、俺の欲求なのか…。
    キスを一度やめて名残り惜しく糸を引く唇を離して吐息を吐けば、キスを褒めてくれるように何度か口元を啄まれて向。
    そうして何かを確かめる様に頸から首へと宿儺の手が這う。

    「…そろそろ頃合いだろう」

    何が?
    そう問い掛けるよりも先に、目の前に黒い物体がぶら下げられる。
    よく見ればチョーカーで、つるりとした細い黒い革が2本並び束ねる様に金色の留め具が付いている。
    シンプルで首に巻いた時にも支障や違和感がない様な柔らかなそれが目の前に揺れる。
    「…それ」
    「collarだ」
    「うん」
    collarはSubにもDumにも特別な物だ。
    2人を繋ぐもの…
    2人の信頼を表すもの。
    DumがSubにそれを贈るのは、これは俺のだ。と所有印として、そしてほかのDumからSubを護る虫除けとして、2人の関係を目に見えて確固たる物にする意味がある。
    それを俺に…

    「…なんで」
    「言っただろう、頃合いだ。恵…もう少し危機感を持て。」

    宿儺が何を言っているのか分からない。
    危機感とは何に対して持つ物なのか。
    何が頃合いなのか。
    襲いくる不安に険しい目で、目の前で揺れるチョーカーを睨み付けてしまう。
    警戒している事を感じたのか、宿儺の口から小さく息が抜けて、顎を引かれ真っ赤な柘榴の様な瞳が俺を見つめる。

    「最近のお前は人を惹きつけ過ぎる。魅せられているのは俺1人では無い。それがどうしても…俺を揺さ振る。俺の言葉が分かるか?」
    俺に言い聞かせる様にゆったりと言葉が落とされていく。
    「性差など関係無い…会った時から揺らいだ事は無い。」
    「…ッ」

    まるで言葉が出ない。
    真摯な瞳に見詰められて、その瞳の色がいつもより濃いく感じて揺らめく熱を感じてごくりと咽喉が上下する。
    「もっと…」
    「ん?」
    「もっと簡単に、言え」
    詰まった声がやっとのことで言葉になった時、それは意外なもので、向き合った男の目が少し驚きで見開かれるのが見えた。
    自分の言った言葉がまるで子供みたいで、恥ずかしさを感じて赤くなってるだろう顔を隠す様に俯いても吐き出された言葉は消えてくれない。

    「伏黒恵…Look、こっちを見ろ」
    「ん」
    羞恥と緊張と驚き、いろんな感情で震える唇をきゅっと引き結んでコマンドに従う。
    穏やかなその声に惚けてしまいそうになるのを耐えて、そろりと宿儺を見つめれば、満足そうにして、それから…

    「愛してる。俺が愛しているのはお前だけだ、伏黒恵。」
    ぶわりと全身に熱が回る。

    この男は、SubやDumなんてものを抜きにしても、俺を愛してくれると言う。
    初めは自分のホルモンバランスを保つためだけの関係だと思っていたし、実際に俺はそうだった。
    けれど、次第にずぶずぶと好意を抱いて、好きになって、宿儺のものになりたいとまで思っていた。

    「貰ってくれるか?」
    当たり前だ、、ッ
    込み上げてくる涙を堪えながら宿儺の少し不安げな雰囲気を感じ取りながら何度も頷けば、撫でられた首元へ革が当たる。
    少しの締め付けと次第に広がる暖かい快感に吐息が漏れて、コマンドを聞いて褒められた時の様な幸せに震える。

    「本当はもう少し待つつもりだったんだが…」
    ぽやぽやと浮ついた様な感覚に頭が回らない。
    宿儺が低く何かを言っている気がしてそちらに意識を向けて見れば、とさりと背中に柔らかな感覚が広がり、視界が回る。

    「俺の我慢が限界だ」
    押し倒されたのだと思った頃には宿儺の身体にぎゅっと抱き締められていて、閉じ込められたそこで熱い体を意識する。
    「どうしてこんなにも愛らしいのか…なぁ、恵」

    "歳が離れていて完璧で優しい余裕のある大人の尽くしたがりなDum"
    初めて会った時から、あまり変わらない宿儺への評価。
    それが少しだけ形を変えた気がした。
    今俺を愛いと言って見下ろしてきている男の表情は初めて見る程に欲情していて、collarを贈ったからか興奮しているのが何となく感じ取れる。
    俺を見る周りに嫉妬して、自身のSubだと示したくて、俺を縛りたくて、collarを準備したのかと思うとゾクゾクと言い知れない感覚が襲ってくる。
    これは喜びとはちょっと言えない様な、少し重いものかもしれない。
    宿儺の所有欲から始まった関係、所有欲から独占欲へ…
    ずっと我慢して堪えてきたのだと、俺の身体を撫で回しながら熱い吐息を吐くDumに俺の身体が性的に興奮しているのが分かる。

    「Strip」

    至る所を撫でられながら嬉しさに震える身体が、宿儺から言い渡されたコマンドで大袈裟なほどにビクつき心臓が締め付けられる様に苦しい。
    押し出される様に吐き出した吐息は、宿儺の唇に覆われて、初めて言われたコマンドに羞恥と快感を覚える。
    「はぁっ、ん…ぅ、は、っ」
    「くく、ッ、手伝ってやる」
    興奮にもたつく俺の手が自分のTシャツを脱ぐのに手間取っていて、どうしたって子供の様に見えるそれに宿儺の手が掛かり、もだもだと汗でひっくつくTシャツを脱ぎ捨てて、足の間に陣取った宿儺の顔を見ながらゆっくりとスラックスを脱いでいく。
    腰を上げてずらしていき、足を抜くのを手伝ってもらう。
    Tシャツとズボンを脱いだだけで息も絶え絶え、頭は緩み、身体は脱力する。
    最後に下着を…そう思ってパンツのゴムに手を掛ければ、上から宿儺の手が被さり動きが止まる。

    「ん…?」
    「good boy、いい子だ」
    「ンンっ、、ッ、あんま…見んな」

    耳元で低い声が落とされて下腹部がきゅっと締め付けられる様な感覚を覚える。
    Tシャツとズボンをベッドの下へと落としたDumの視線が、俺の身体を這って、隅々まで見られている。
    そこまで貧相な身体じゃ無いとは思うけれど、初めて晒す裸は宿儺のお眼鏡に叶うのか。
    あまりにもじっと見詰められる物だから恥ずかしくなって腕をクロスして顔を隠す。
    初めて見る欲情した宿儺の顔をなんだか見てはいけない様な気がして、そこに気恥ずかしさも加わり尚更目を合わせられない。
    「う…っ、んンッ、ぁ…っ、ア」
    熱い大きな手が身体を直に這い回りたったそれだけなのに気持ちいい。

    「存外、隠されると見たくなるものだなぁ」
    宿儺の声が随分楽しそうだ。
    スルッと腕を撫でられたかと思えばその感触が下へと滑っていき、下着越しに既に反応している熱を揉み込まれる。
    「ンッあ!あっ!?」
    予想だにしなかった強い刺激に声が上がり、自分の声とは思いたく無い様な甘いそれに慌てて緩んだ唇を引き結ぶ。
    「……ん、く、ふっ」
    「声を抑えるな、唇が傷むぞ」

    恥ずかしくて仕方ない。
    気持ち良くてどうにかなりそうで、こんな事ならコマンドを使って無理矢理にでも命令されたいと思ってしまう。
    「随分と敏感だな…恵」
    揉みしだく手は止まらず、響く低音は俺の羞恥心を煽り理性を掻っ攫っていく。
    初めてのセックスで淫乱だなんて思われたくない。
    こちとら健全で性に多感な年齢だっ!

    「ッ〜仕方ない、だろ…。あんたが、好きなんだっ!我慢してたのがあんただけだと思うなっ」

    ぐっと食い締めた歯が浮いて、思わず叫ぶ様に伝えれば宿儺が息を呑む。
    知って欲しかった。俺だってあんたの事が好きで好きで堪らなくて、幾度となくプレイでSubスペースに陥るくらいには信頼して全部を預けてるんだって。
    俺だって愛したい。
    「……、、余り煽るな」

    低く唸る様な声に焦る。
    怒らせたかもしれない、もう止めると言われるかもしれない。
    慌てて腕の隙間から宿儺の顔色を窺えば、さっきにも増してぎらついた獰猛な獣の様な瞳と目が合い、ひゅっと喉が鳴る。
    何かを耐える様に寄せられた眉間の皺と、歯を食い締めているのが見えて初めての表情にどきりとする。





    目が覚めて、覚醒までぼんやりとする。
    カーテンの隙間から光が漏れていて、外が晴れているのが分かる。
    背後から抱きしめられる様にしてベッドに横になっている状況と、枕の下を通って腕枕で回された宿儺の手が俺の手を握っているのを確認して、じんわりと幸せを噛み締める。
    力無いその手をこっちから握ったり、手の平を擽ったりと小さなちょっかいをかけながら空いた片手で首元を触る。
    そこには宿儺に贈られたcollarがきちんと巻いてあり昨日のことが夢では無かったんだと教えてくれる。
    「ん…めぐみ、起きたのか」
    少しの身じろぎの後、寝起きの掠れた声が聞こえてきて腰を抱き寄せられる。
    「ついさっき」
    宿儺の手に従ってそのまま向き合う様な体勢になれば、未だに気怠げな瞳が俺を視界に収めてスッと細められる。
    「無茶をさせたな」
    ぴったりとくっついた身体から宿儺の体温がじんわりと移ってきて、宿儺の指が俺の目元を撫でる。
    きっと赤くなってるだろうそこは、宿儺から与えられた快感に訳も分からず涙が溢れた名残りだ。
    「……、きもち、よかった」
    「そうか」
    ふっと笑った宿儺が顔を寄せてきて、唇が軽く啄まれる。それから頭を擦り寄せてきてぎゅうぎゅうと抱き締められて暫くそのまま動かなくなる。
    「先に起きてないなんて珍しいな」
    「ああ…」
    「いつもはプレイした後すぐ居なくなってただろ…」
    「ああ…」
    「目が覚めて宿儺が居るの、初めてだ」
    「…さては怒ってるのか?」
    宿儺の腕の中で目が覚める幸せを味わってしまっては、ついつい文句も言いたくなるものだ。
    今までは目が覚めて空のベッドの中、美味しそうな匂いがしてくるのが当たり前だったから…

    「んん、ちゃんと居てくれ。その方が嬉しい。」
    「分かった」
    柔らかな頷きと甘やかな声に、今からとことん世話を焼かれるのを感じ取って口元が緩む。

    "あんたの彼氏は所謂スパダリね"
    "うへぇ、彼奴が?"
    高校に上がって仲良くなった釘崎を加えて昼の弁当をつつきながらそんな会話をしたのを思い出す。
    スーパーダーリン
    そう呼ばれる大人の男は俺のDumで俺の恋人。
    実は嫉妬もするし独占欲もあって、尽くしたがりで可愛いところのある男。
    新しく発見した宿儺の良い所はあいつらには内緒にしておこう。
    「恵」
    コマンドをくれる前の優しい声
    この声で名前を呼ばれると全身が蕩けそうになる。
    コマンドが早く欲しい。
    宿儺に褒められたい。
    そんな思いで今日も愛おしい声に耳を傾ける。



    end.

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