古城傀博♂『操り人形が今、舞い踊っております。至高無上の芸術のため。……行きなさい、"クリムゾンソリティア"!さぁ、行くのです!』
響く司会者の声。舞い踊る赤い衣装の歌姫たち。そしてスポットライトを浴びる自分。
――あの時の事は覚えている。
正気は何か膜を一枚隔てたような意識の中、ただ身体は別の何かに突き動かされているようだった。この舞台の主演である私の待ち望んだ観客に、私の剣舞を。私の演技を。――私の歌を聴かせねばならぬと。ただそれだけにすべてを支配されその通りに身体を動かした。
目当ての主役が何処にいるのかは本能的にわかった。舞台の下手。その奥からこの舞台を観ているのだろうと。しかしその道中、舞台の中央には無粋にもこの主演の道行きを阻もうとする観客たちがいた。
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