持続する下心の話「……なんだ」
じろり、と睨めつけてくる視線は並みの人間ならもしかして泡吹いて倒れるかもしれない、というのは大袈裟だが少なくとも動けなくなりそうなくらいには厳しい。そのはずなのだが。
なんだかなあ、どうにも自分はこれが嬉しいらしいのだ。
こんなんなのに、何だか可愛いかもとか思ってしまうらしいのだ。何だよこれと肩を落とす。というか可愛いってどうなのだ。ちょっと頭が良いからって口を開けばむかつくことばかり、いつでも見下した視線の自分よりでかい男の何がどう可愛いんだ。
というか何が可愛いって、こいつがゲッター線の研究をしている時の(明らかに危ない目付きをしている)嬉しそうな顔が可愛いとか、ちょっと豆腐の角にでも頭ぶつけた方がいいんじゃないかと思うのだが、残念ながらあるものはそう簡単になくならない。
つまりどういうことかと言うと、竜馬はこの神隼人という男のことが好きだった。自分でもそんなアホなとは思うのだがどうしようもない、何だか知らんがすごくすごく好きらしいのだった。で。ついでに言うと、竜馬はそんなにおツムのよろしい類の人間ではなかった。というか割とその真逆だった。なので。
おーそっか、とそれはもう非常に軽ーく出てきたその内容を受け止めて、非常に軽ーいノリでそれをそのまま口にしたのであった。
「いやな、なんか俺、お前のこと好きらしいぜ」
場所は食堂で、時間は昼時であった。
だから隼人の返答も当然といえば当然だったが、もっともそんな理屈は竜馬には通用しない。
「まさかそこまでおめでたい頭の持ち主だったとはな。馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、ますます馬鹿になったか?」
「ああ? お前知らねーのか馬鹿っつー方が馬鹿なんだぞ!」
「いや、元から驚異的な馬鹿だったか。すまんな、今度はお前にも理解できるように言ってやろう。いいか、まずここは食堂で飯時だ。次に俺は男でお前も男だ。最後に俺はお前が好きじゃない」
「別にそんなのどうでもいいじゃねえか」
俺がお前を好きなのとそれ以外と何の関係があるんだ、と竜馬は問うた。竜馬には本当に分からなかったのだ。
隼人は何を言っているんだこいつはというような顔をして、それからわざわざ頭を押さえて瞑目した上で嘆息してみせた。これだから馬鹿は、というニュアンスだった。