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    チェンゲ隼竜
    大昔自サイトに上げてたような気がするなんのひねりもない地獄の話、の真ん中あたり

    #隼竜
    hayaryo

    浄火篇

     落ちていた。
     透明な筒の中をただひたすら真っ逆さまに落下していた。あるいは上昇しているのか。どちらが上でどちらが下か。だが、そのようなことはこの空間においてはまったくの些末事であると識っていた。
     不意に筒の表面にノイズが走る。そして――

     ふと気付いた。その筒は直線を描いてはいない。
     ゆるやかに絡み合う二匹の蛇を無数の触腕が繋ぐその配列は、二重らせん――正しくDNAの立体構造であった。
     落ちていく。
     落ちていく。
     昇っていく。
     昇っていく。
     ゲッター線とは何だったか。進化とは。どこへ行く。どこへ行き着く。真理。原理。摂理。インベーダー。ハ虫人類。鬼。神。ゴール。ブライ。暴走。取り込まれる。同化。神ゲッターロボ。聖ドラゴン。世界最後の夜明けとは。

     次に竜馬は反応炉の中にいた。落下あるいは上昇が極まったということだろうか。もっともそこが本当に反応炉であるかは確証がない。
     あるいはそれは箱庭の中かもしれない。
     あるいはそれはフラスコの中かもしれない。
     あるいはそれは銀紙に包まれた中かもしれない。
     あるいはそれは入れ子式のマトリョシカの中かもしれない。
     あるいはそれは――
     あるいは――


     反応炉の中で竜馬は自身が透き通り拡散していくのを感じていた。今や彼はどこにでもいてどこにもいなかった。ただ、皆が竜馬の内側に、あるいは外側にいることが分かった。
     弁慶がいた。近くには元気もいる。肺と喉と口があれば安堵にため息のひとつも吐いただろうが、今の竜馬にそのような器官は生憎と存在していないらしかった。
     武蔵とミチルがいた。ミチルに続いて武蔵もこの時間軸では死んでしまったようだった。それとも武蔵は別の世界線でも大概中途で死んでしまうので、またと言った方が正しいかもしれない。だが同時に、武蔵もミチルも今でもこの宇宙の中に存在しているのだということが分かった。今というのがいつなのかは、過去であり現在であり未来でもあるのだが。
     早乙女がいた。號がいた。悪いことをしたなと始めて思った。そういう役割であるとはいえ、あの二人にはいつも随分な世話をかけている。
     インベーダーどもがいるのも分かった。これは明らかな異物だった。宇宙を人体に擬えるならば、それは何処よりか飛来した毒性の非常に強い病原性微生物である。インベーダーに対抗する自分たちはさながら白血球といったところだろうか。
     そして。
     隼人がいた。
     おまえ、そこにいるのか。声帯がないので声が出ない。
     隼人は相変わらず傷だらけになりながら生き急いで、しかし自身はいつでも生き残ってしまい、数多の命を見送って、そのためになお生き急いで傷ついて血を流して、自分には嘆き悲しむ権利などないと皮肉っぽい笑みばかりを片頬に浮かべて、そういう風に生きていた。相変わらずだな、おまえは。その相変わらずというのがいつのどこのことなのか、竜馬には分からない。分からないが。
     隼人。
     ようやく竜馬はずっと目を背けていたものを直視することにした。

     殺してやると思っていた。殺す、絶対に殺す、必ず殺す。
     その言葉は、裏返せばそれだけ相手を信頼していたことの証だ。

     本当に殺してしまいたかったのは自分自身だった。けれどこうしてすべての覆いを剥ぎ取られた状態になってみれば分かる。弱さは悪ではない。
     むしろ弱さを知らない強さなど、そんなものは強さではない。

     常識だとかちっぽけなプライドだとか、こうしてすべてを剥ぎ取られてみれば最後に残った思いはただひとつだった。
     おれは。
     おれたちはただ、おまえとどこまでも行きたかった。

     いずれ旅立ちの時がやってくる。種子は風に舞い何処にか届くだろう。根ざし、芽吹き、いつか花開くだろう。そしてまた新たな種子を生み出すのだ。だが、それも今はまだ微睡みの内に皇帝が見る夢の中。

    (そして更なる飛躍を)
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     落ちていく。
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     昇っていく。
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