蓮花湖の水面に波紋が広がる。
小さな波紋が三つ四つと重なって、次第に波紋の隙間がなくなり、ただ細かく湖面が波打ちだす。
蓮の葉にも、花弁にも、しずくが落ちて丸まって転がる。
蓮花塢の蒸し暑い夏の朝である。
藍曦臣はぼんやりと明けゆく空の下、欄干に手をついて、その様子をながめていた。中衣に深衣を羽織っただけの格好で、雲深不知処であれば絶対にこのような姿をさらしはしないが、ここに禁じる規律はない。
振り返れば紗の帳子に閉ざされた牀榻がある。
その内には先ほどまで腕に抱いていた人が眠っている。
再び湖に視線を戻した藍曦臣の口からは、重たいため息が落ちた。
閉関中に関係を持ち、その後宗主として再び世に戻っても、彼との交わりを解くことはできなかった。すでに一年以上をこうしてすごしている。
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