ひまわりの花束をきみに夏が始まったばかりのある日のこと。
午前中の早い時間に1週間の海外出張を終えて七海の家に帰ると、僕の持ち込んだ私物はスーツケースにまとめられ、リビングのローテーブルの上には僕の家の合鍵と、小ぶりのひまわりが生けられた花瓶があった。
合鍵の下のメモ用紙には、七海の几帳面な字で、こう書いてあった。
──私たち、もう終わりにしましょう
昨日、電話で話した時には変わった様子はなかったはずだ。
僕が出張から戻るからと、伊地知に言って七海も今日明日と休みにしてもらった。
七海には伊地知くんにあまり無理をさせないでくださいと言われたが、多少強引にしないと七海は休暇を取ろうとしない。
それは伊地知も心配していて、休暇の調整を頼んだら快く引き受けてくれたのだ。
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