甘い降参 手塚の話は時々長い。不二は小さくため息をついた。当然すぐに目にとめられて、「聞いているのか」と追撃される。
「聞いているよ。でも」
「でもじゃない」
「本当においしかったんだよ。来年またもらえたらいいなって思うくらいにさ」
バレンタインにすごいチョコをもらったと、そんな話をしていただけのはずだったのに。
「それは分かった。誤解をされる言い方はよせ」
「……え。それ、キミが言う?」
目の前にいるこの男は、「好きだな」と言ったのだ。不二が渡したチョコのことを、吐息混じりの甘い声で。それこそ誤解を生む言い方だ。
「生まない」
手塚は堂々としたものだ。
「だって、実際」
不二は思わず勘違いをしそうになった。そんな自分が恥ずかしくて、電話の後でベッドの上に突っ伏した。
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