【未完成】いちゃいちゃしたいんです。いちゃいちゃしたいんです。
ハム安fry × 大学生夢主
欲求不満とは、心の中や外からの力のために、欲求が満たされないで、楽しくない状態のことを言う。
これが[欲求不満 意味]と調べた結果だ。
いや、楽しくないわけではない。むしろ今の生活は充実してるのでそこに不満はない。
だけど……だけど!!性的欲求不満はあるよ!!そりゃあありますとも!!えぇ!!恋人といちゃいちゃしたいって思うのは普通じゃん?!
連絡はたまにしか返ってこないし会えない期間が何週間も続いて、会えても半日が精一杯。恋人関係と名前をつけていいのかわからない……。いや好きだし別れを切り出されたわけじゃないから恋人ではあるけど。
とはいえ、降谷さんと付き合う時に会えないこととか、それらのことは承諾済みだった。連絡はなかなか返せない、会えない日が続くのなんて当たり前。そんな僕でも付き合ってくれるのか、と聞かれた。
私だって、降谷さんのことが好きなのだ。もちろんその条件には承諾して、遠距離恋愛みたいな感覚でいたら大丈夫だと思ったらこの有様。愛されてる自覚もあるけど、それでも寂しいものは寂しい。
同じ町に住んでるのになかなか会えないのは本当に辛い。
「あー……会いたい無理……ほんとうに無理……」
「そんなに会いたいならおねだりすればいいじゃん」
「それができたらとっくにしてるってば……」
「相変わらずあんたの彼氏さんは忙しいねえ」
大学の食堂でだらだらとしながら言葉をこぼす。反応してくれたのは高校からの大親友ちゃんだ。
まず、なぜ会いたいという感情が出てきたのか。
その理由は、昨日の夜にある。そろそろ寝ようと思った時に降谷さんからの久しぶりの連絡をもらった、しかも電話だ。5分だけの通話だったけどものすごく満たされて、幸せに浸りながらそのまま寝た。
ありきたりな展開だけど、夢に降谷さんが出てきてしまったのだ。夢でも会えたのが嬉しくて、喜んで降谷さんの方に向かった瞬間目が覚めるという、最悪な目覚めだった。
そこからは会いたい、好き、ぎゅってしたい、キスもしたい、という欲求的感情しかでてこなかった。
考えてみたら、降谷さんに3週間近く会えていない。こういう感情になっても仕方がないことだろう。
「あとどのくらいで会えるんだろ……」
「もうさ、会いたいって送ればいいんじゃない?いつ会えるか教えてくれるかもしれないじゃん」
「まぁそうだけど……仕事の邪魔をしたくないじゃん?」
降谷さんがどんな仕事に就いてるかは警察関係の仕事ということしか知らなくて、あとはすごく忙しいってことくらいしかわからない。きっと上の立場なんだとは思う。私からみても降谷さんは仕事も運動も勉強もなんでもできる人。だからこそ、連絡が返せない理由もわかるし会えない理由もわかる。
だけど、やっぱり会いたい。
「会いたいって言われて邪魔だ、って思うやつはいないよ、彼女からのメッセージなら尚更」
「うーん、そうかもしれないけど…」
「ほら、早く送りな」
そう言って彼女は机に伏せておいた私のスマホを指差した。
( ……うん、会いたいって言うだけだもんね。流石にそれで嫌われないよね)
スマホのメッセージアプリを開く。降谷さんのトーク履歴は一番上になるように設定してるので、すぐにトーク画面を開くことができる。
“会いたいです”という6文字は打てた。あとは送信ボタンを押すだけだが、やっぱり少し躊躇してしまう。嫌われることはないとしても、迷惑とかは思うかもしれない。
恋人だから思わないかもしれない、だけど相手がものすごく忙しかったら?って考えれば考えてしまうほど送れない。
「えい」
「?! え、ちょっと!」
なかなか送信ボタンを押さない私に呆れたのか、送信ボタンを押されてしまった。
「待って、送信しちゃったじゃん!決心してなかったのに!!」
「あんたが送信ボタンを押すの待ってたら夜になるわ」
「いやそうかもだけど!!それにしてもよ!?」
トーク画面をじっと見つめる。
既読がつく様子もなく、触れずに見つめていた画面はそのまま真っ暗になってしまった。
「うーん、忙しいだろうから返信は来ないかもなぁ」
「まぁ、見てくれるだけでもいいんじゃない?会いたいって気持ちは伝わるわけだし」
「確かに。何もしないよりかはいいよね」
「そーそ。そう考えよ」
返信がなくても既読がつけば気持ちは伝わることになる。数日後に「この日に会えるよ」とかそんなメッセージが届くかもしれない。
「ほら、送るもん送ったんだから。早く教室に行こ」
「嘘やん、私ってばメッセージ送るだけにこんなに時間をかけてたんかい」
次の講義まで15分を切っていた。次の教授は5分前行動大好き教授だから早く行かないといけない。
急げ急げと、慌てながら食器などを片付けてから食堂を出る。
早歩きで教室に向かうと、まだ教授は来ていなかった。
無事に間に合ったので席についてから一息をつく。精神的に疲れてしまった。
(……既読がつけばラッキーかなぁ)
そんなことを考えていれば、午後の講義が始まった。
* * * * *
今日はバイトがないから図書館で勉強でもしようかと思い、図書館の方に足を運ぶ。
友達に「一緒に行かない?」と聞いたが、バイトがあるからと言われて帰ってしまった。
仕方ないと思いながらゆっくりとした足取りで向かう。勉強する気にはなれないが、どうせ家に帰ってもだらけるだけで何もしないし、それなら図書館にでも行って無理矢理レポートを少しずつでも進めるような状況を作るしかない。
レポートをどんな内容で書こうかと頭で考えていると、ポケットに入れておいたスマホが震えた。一回ではなく、連続的に震えているのできっと着信だ。
バイト先から「出勤してほしい」とかの連絡かな?と思い、スマホの名前表示のところをよく見ずに電話に出る。
「はい、もしもし」
『あ、よかった。タイミングが合ったみたいだ』
スマホから聞こえてくる音声は、バイト先の店長じゃなかった。私が、ものすごく会いたいと思っている人物の声が聞こえる。
「え?!降谷さん?!」
『……確かめなかったのか』
「いやだって、連絡返ってこないだろうな~って思ってたからバイト先かな?みたいな……』
『……それは悪かった。でも今度から気をつけるように。非通知だったら出たあとに危険もあるんだからな』
「う、以後気をつけます……でも、なんで突然電話を?」
降谷さんはものすごく忙しい。それは重々承知だ。なのに昨日今日で電話をかけてくるなら、何か大事なことでもあったのだろうか。
『休みを取ったんだ。といっても月曜日の昼からは仕事だけど……君に予定がなかったら僕の家に泊まりに来ないかなって思って』
「……え?休み?月曜日まで?」
『ひとつのヤマを越えたからな。時間ができたんだ』
「月曜日まで一緒にいれるんですか……?」
『そういうこと。もちろん無理強いするつもりは』
「一緒に過ごしたいです!!」
降谷さんが言い終える前に勢いよく返事をすると、電話の向こうから「即答だな」と言いながら笑われた。
幸い、バイトは来週の月曜の夜からだ。明日からの土日にシフトを入れなかった私ナイスすぎる。インターンも企業のイベントも何もない。もしかしてこれがあると思って何も予定を入れなかったのでは、と思うくらいにはこの土日はフリーだった。
『講義は終わってるだろ?迎えに行くよ』
「あ、でも荷物とか取りに帰りたいので私がそのまま降谷さんの家に向かいますよ」
月曜日まで、ということは洋服も下着も2、3日分は持ってこないといけない。会えると思っていないので、当たり前だけどお泊まりセットは持ってきていない。
『家に寄ってあげるから心配しなくていい。20分後に裏門前にいてくれ』
「でも、面倒じゃないですか?」
『……会いたい、なんて言われたら一刻も早く、少しでも長く過ごしたいってなるんだよ。僕だって君に会いたかったんだから』
顔が一気に熱くなった。きっと今の私の顔はチークなんていらないくらいに真っ赤になってるに違いない。メッセージを見られたことに恥ずかしさはあるが、降谷さんもそう思ってくれたんだ、という喜びが大きい。私だけが会いたいって思ってるわけじゃなかった。
「……じゃあ、お言葉に甘えます」
『また20分後に』
「はい!」
通話終了ボタンを押す。
図書館に行こうとしていた足の向きを変えて、とりあえず化粧直しのためにお手洗いへと向かった。既に何度かすっぴんは見られてるけど、久しぶりに会うんだからお風呂に入るまでの顔面をマシにしておきたい……!!
そう思い、超特急でメイクを直す。少しはマシに見えるであろう。うん、大丈夫だ。
自分に大丈夫と言い聞かせて、裏門に向かう。
既に20分経っていたのか、降谷さんの愛車であるRX-7が見えてきた。
少し小走りになりながら車の方に向かえば、気づいた降谷さんが運転席から降りてきて、私の前に立った。
「降谷さん、お久しぶりです!」
「あぁ、久しぶり。さぁ、乗って」
そう言って助手席の方を開けてくれる。
降谷さんのエスコートに少し照れくさくなってしまう。
久々に見た降谷さんにドキドキとして直視できない。いやだってこんなにかっこいいんだよ?もう無理しんどい私の彼氏かっこいい。
エスコートされるがまま助手席に座って、隣の運転席に降谷さんが座る。
(やばい、車に乗る動作ですらかっこいい。どうしてこんなにかっこいいんだ……意味がわからない……)
直視できないとか言いながら、車のエンジンをかけて車を発進させる降谷さんを見つめる。
運転してる時の横顔も好きなんだよなぁ……。まっすぐとした目で運転してる時の目が好きで、つい眺めてしまう。
流石に見つめすぎたのか、前を向きながら「そんなに見つめてどうしたんだ?」と軽く笑いながら聞かれた。そりゃこんなに見てたら気づくよね。
「その、久しぶりだからつい……?」
ふは、っと吹き出すように笑った後「そっか」と言いながらぽんぽんと頭を撫でられた。笑う要素があったのか不思議だが、頭を撫でられたのが嬉しい。
少し恥ずかしくなって、窓の外を眺める。大学から私の家までは車で30分するかしないかだ。いつでも泊まれるようにお泊まり用のスキンケアセットとかはまとめてあるし、準備にはあまり時間がかからないはず……。
「あ、」
「ん?どうかした?」
「い、いや!なんでもないです!」
そういえば今度会えた時のために可愛い洋服とか買ったよね。確かパステルカラーの可愛い下着も買った。持っていって損はないよね、うん。
少しでも早く準備ができるようにどこに何があるかを思い出していればいつの間にか私が住んでいるアパートの前だった。
「ありがとうございます、急ぎますね!!」
「慌てなくていいよ、そこの駐車場で待ってる」
「わかりました!」
半ドアにならない程度の強さで車のドアを閉めて自分が住んでいる部屋まで行く。
鍵を開け、入れば朝と全く変わってない景色。少し大きめのトートバッグに物を詰め込んでいく。
月曜日までなら、降谷さんの家から大学に行ってもいいよね。月曜日まで一緒に過ごせるっていってたし!
あれもこれもと詰め込んでいたら結局大荷物になってしまい、きちんと戸締りをしてから駐車場に向かえば車の中からぎょっとした顔を見せて、慌てて運転席から降りてきた。
「迎えに行けばよかった……」
両手に持ってる荷物を取られ、トランクへと積まれた。