人恋しい 瑛くんに別れを告げられてから次の日のこと。
「あかり、もう学校行く時間でしょ」
「はーい……」
お母さんに起こされて支度をする。今日から学校へ行っても瑛くんに会えないと思うと、学校へ行くのが楽しくなくなった。
学校に着くと、教室にやはり瑛くんの姿は見えなかった。授業も身に入らずボーっとしてただただ時間だけが過ぎていく。わたし、どうしたらいいのかな……。
「あかり!」
ふと気づくと、目の前にはるひちゃんがいた。
「なーなー、一緒に帰ろうや! なっ、なっ?」
いつものように明るく話しかけてくれるはるひちゃん。
「じゃあ、お茶して帰ろうよ」
そんなはるひちゃんの誘いに少し元気が出て、一緒に喫茶店に寄ることにした。
「そう言えば、あんたと喫茶店行くの久しぶりやもんなー。佐伯とはよう行ってたのに」
「えっ、知ってるの?」
「あ? 図星? あたしの情報網をナメたらあかんで」
「さすがはるひちゃんだなぁ……」
改めて彼女の交友関係の広さに驚かされる。
「ま、あんたら仲良かったしな」
そして、わたしが瑛くんと親しいことに怒らない数少ない女子だ(他に好きな人がいるから?)。だから、はるひちゃんには瑛くんのことを気兼ねなく話せた。
「やから、あいつがおらんくなって、あんた寂しいかな思て、今日帰ろうって誘ったんや。若ちゃんも天地もみんな心配してたで」
「はるひちゃん……ありがとう」
それからもみんな一緒に帰ろうと声をかけてくれたり、休日遊びに誘ってくれた。瑛くんが側にいなくても、わたしにははね学でできた友達がたくさんいる。少しずつ前を向けるようになったけど、それでも彼のいない寂しさは埋められなかった。
「海……」
気が付くと、海に来ていた。海水浴シーズンの夏はとっくに過ぎて冬の潮風が冷たい海だ。そう言えば、最後に瑛くんと一緒に来たのも冬の海だっけ。そのとき瑛くんが話してくれたことを思い出す。小さい頃、近所の子供達とケンカばかりしていつも一人で海を見ていたこと。わたしも海を見たら、元気が出るかな? 海には瑛くんとの思い出がいっぱいで瑛くんに出会ってわたしも海が好きになった。この海でまた彼が隣に――。
「会いたいよ、瑛くん」
呟いたその言葉は波の音にかき消された。