曖昧な ある日、学校へ行くとクラスメイトからこんなことを聞かれた。
「海野さんってさ、佐伯くんと付き合ってるの?」
「えっ? な、何でそんな?」
クラスメイトが言うには、日曜日に瑛くんとわたしが公園通りに一緒にいるのを見たというらしい。確かに日曜日は珊瑚礁の買い物も兼ねて瑛くんと一緒に出かけたけど……。
「たまたま公園通りで会っただけだよ」
「ふーん、そうなんだ」
お店のことも知られないようにそう言っておいた。瑛くんと付き合っているような噂が広まったら学校中の女子を敵に回すことになるし。実際、お店の買い物手伝っただけでわたし達は付き合っていない。「好きだ」「わたしも」なんてやり取りしてないから付き合ってるとは言えないよね……。
「あかり。おまえも、いま帰り?」
その日の放課後、校門近くで瑛くんに会った。
「うん。瑛くんも?」
「ああ。……まっすぐ帰るんだったら、その辺まで一緒に行くか?」
瑛くんに一緒に帰ろうと声をかけられた。断る理由も何もないので、一緒に帰ることにした。少し歩くと、同じクラスの女子が隣のクラスの男子と一緒に帰っているのを見かけた。
「あれ? あいつら……」
「付き合ってるみたいだよ。部活が一緒で仲良くなったんだって」
「へぇ……」
付き合っているあの二人もわたし達と同じように二人で帰っているのだから、同じように二人で一緒にいるわたし達もやっぱりそう思われるのかな? でも、わたし達は……。
「なぁ、今度の日曜日って空いてるか?」
瑛くんから日曜日空いているか聞かれた。
「空いてるけど、また買い物の手伝い?」
「買い物じゃなくて……水族館、行かないか?」
瑛くんから初めて買い物以外の場所に誘われた。お店のこととは関係なく。
「二人で?」
「ああ」
念のために聞いたが、やはり瑛くんとわたし、二人でらしい。勿論行きたいけど、
「な、何で二人なの?」
こんなときに限って素直に行きたいと言えなくて、妙に勘ぐるような言い方をしてしまった。すると、瑛くんは、
「ほら、あれだ……店の手伝いばっかだったから、たまにはご褒美っていうか、な……」
と、誤魔化すような言い方をした。だから、余計瑛くんの本心を探ろうと、
「わたし、別にご褒美なんかなくたって買い物でもいつだって一緒に行くよ」
「何でそう思うわけ?」
と、逆に聞かれてしまった。
「それは……」
瑛くんと一緒にいたいから、瑛くんが好きだから、なんて言えなくて。瑛くんもわたしが何も言えないのを察したのか「いいよ、もう」と諦めたように言う。しばらく沈黙が続いたが、それを破るように、
「で、どうすんだよ、日曜日」
「えっ?」
「行くのか、行かないのか」
瑛くんは再び聞いて来た。そう言えば、どうするかまだ言ってなかったっけ。好きだという本心は中々言えないけど、
「行く」
瑛くんと一緒にいたいという気持ちには正直でいたいから、曖昧なこの関係はもうしばらく続くことになりそうだ。