鍾タルワンライ1231「先生のお誕生日」「プレゼント」「先生、何か欲しいものはある?」
瞳を細め、興味を滲ませた男が言葉を紡いだ。
職人が繊細な手技で仕上げた螺鈿の箱。大自然が永きをかけて作り上げた大ぶりの真珠――それを用いた、首飾り。求むに足るものは多い。
「これ以上となると、さすがにこれ以上は持ち運びに支障が出る。後日に持ち越しても?」
「此処で遠慮しないのが先生の良いところだよね。良いよ。先生が凡人二歳になったお祝いに何か買ってあげようかなって思っただけだから。ちなみに何をねだるつもりだったの?」
ぱち、と瞬きをひとつ。今年も終わりを迎える頃合いだと思っていたが、そんなに経っていたとは。
ふむ、と思案した後で視線を上げる。
「そういう事ならチケットを二枚、取ってくれ。演目はこちらで指定する」
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