このあとすること恋人のことをいやらしい目で見るのはむしろ健全だ、と滝川は思う。誰彼構わずエロいなと思うようなケダモノよりかはずいぶん一途でいじらしいことではないか。だが、最近の己はさすがに度が過ぎているように思えてならなかった。
クッションを抱え込んて床に転がっている安原は、至って普段通りにTシャツとゆったりとしたハーフパンツという部屋着姿で、図書館で借りてきたらしい仏教の歴史がどうのこうのいう分厚い本を眺めている。せっかく安原の部屋に2人きりだというのになぜ、と思うのだが、安原は「分からないことや気になることがあったらすぐその道の人に聞けるのって有り難いですね」と満足げで、その表情は悪くない。
そんなわけで、たまに質問が投げかけられるのをなるべく丁寧に答えてやっていた。
2755