「風丸っていいよな」
「え?」
半田が突然言った言葉に着替えをしていた手を止める。
「足速いしさ」
「それは陸上をやってたからだよ」
「……そっか」
「半田、どうかしたのか?」
なんだかいつもと様子が違うような気がする。
「俺、サッカー部にいていいのかなって思って」
「っ、急にどうしたんだ?」
「円堂みたいな熱い思いも、染岡みたいな強いシュートも、マックスみたいな器用さも、風丸みたいなスピードも……俺は持ってないし」
「でもお前は、」
「一之瀬が入ってきて俺はベンチいきになった。確かに一之瀬はすごい。でもだからってここに、雷門にこなくたって……」
「半田……」
「ごめん、仲間のこと悪く言うなんて最低だよな」
「……」
「鬼道にお遊びサッカーなんて言われた時は腹が立った。それはみんなとやるサッカーが好きだったから」
「俺もそうだよ。サッカーがこんなに楽しいなんて思わなかった」
「でも、もう違う」
「違うって、何がだよ」
「今は勝つためのサッカーだろ。俺は勝つためには必要ない」
「そんなことない!半田だって仲間だし、これからも一緒に、」
「俺にもっと力があったら……。いやごめん、変な空気になっちゃったな」
半田は泣きそうな顔で笑っていたけれど、かけてあげる言葉が見つからなかった。
でもそれからしばらく経って宇宙人が攻めてきて、力の差を思い知らされて力が欲しいと思った。
半田と同じ気持ちになった。悲しみと絶望と……。
“それ”はそんな感情を洗い流してくれる存在だった。
俺は剣崎から預かったそれを持って半田たちのいる病院へ向かった。
これでまた俺たちのサッカーができる。
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やはり変わっていなかった。
まるであの時から全く時が経っていないようだ。
その瞳には相変わらず力強く光が宿っている。
俺だけじゃなく他のみんなもお前のそういうところに惹かれたのだと思う。
しかし今は前とは違う。サッカーの存在意義も随分と変化した。
お前は“サッカー”を理解しないといけない。
さぁ円堂、試合を始めよう。