夜明けの子 嗚呼、夜が明ける。
朝がくる。
じわりと広がりゆくその光は、けして暗闇を切り裂くような激しさはなかったけれど。
貫き穿つような鋭さもなかったけれど。
代わりに月のように見守る優しさがあった。
慈母のようにいたわる温もりがあった。
絶望と嘆きの夜を、そっと包んで明日へと変えた。
嗚呼やはり。
この子どもはその名の通り、暁の子であったのだ。
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「そういやオマエ、あきとって、どういう風に書くんだ?」
どのタイミングだったかすでに思い出せはしない。
だが忘れる程度には初期で、そんな会話を切り出せる程度には慣れた頃合いだったのだろう。
ふと思いついて、公園のベンチでおにぎりを頬張る青年に尋ねてみれば、数瞬目をまたたくような間があった。
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