とある日の夜いつもならアジトに顔を出しているはずの伊月兄妹が揃って顔を見せに来ない。
今日はこねぇのか?いや、暁人は来るって言ってたはずと頭の中で考えているKKの耳にガチャリと扉が開く音が聞こえた。
「「お邪魔しまーす」」
その声は聞いたことのある馴染みの、そう、今まさにKKが考えていた人物達だった。
「おー、今日は遅かったな」
「あ、KK、お疲れ様。文化祭が近いからその準備にね…」
「私も学園祭の準備が忙しくてー…」
そう言う兄妹の顔はどこか疲れているような顔をしているのを見てそういうシーズンだったかとカレンダーを見遣る。
「お前たちはなにするんだ?」
「私のクラスはハロウィンが近いから仮装喫茶するって」
「僕のところはお化け屋敷かな」
ハロウィン…確かに10月はハロウィンが近いのでそういう趣向に向かうのは必然だと思った。
「ハロウィンねぇ…懐かしいな、俺がガキの頃ハロウィンになったら河童の着ぐるみきて爺さんとこに菓子強請ってたぜ」
「へぇ!河童!写真ないの?」
「悪いがねぇなぁ…」
「そっかぁ…残念…」
興奮気味にKKに写真があったら見たいと言う麻里の横で暁人は何か考える素振りを一瞬見せるも直ぐに麻里と残念がっているのをKKは首を傾げるも思い悩んでるようには見えなかったので話題を変えようと口を開くと麻里が時計を見て慌て始めた
「どうしたんだ?」
「今日絵梨佳ちゃんの家にお泊まりなんだけど予定より学園祭の準備で遅くなっちゃって今からだと遅れちゃう…」
「僕が送って行くよ。まずは家に帰って荷物持って行こう?」
「ありがとうお兄ちゃん!」
そう言うと麻里は慌ただしく玄関に向かう。その途中に「お邪魔しました!」と律儀に言ってるのを見て律儀だねぇと思っているKKに暁人は「今日泊まって良い?」と聞いてきたので咄嗟に「あぁ」と答える。
すると暁人は良かったと嬉しそうにはにかみ麻里の後に続き玄関に向かう。
数秒後玄関の扉を開く音が聞こえバタバタ走って行く足音にKKは笑った。
一旦伊月宅に着いてお泊まりセットを用意してる時暁人は思い立ったかのように麻里の部屋の扉をノックした
『はーい』
「相談、良い?」
中から麻里が扉を開き首を傾げ兄が自分に頼ってくれた事を嬉しく思ったのか顔を綻ばせて「うん!」と大きく頷いた。
「KKにいたずらしたいんだけど、思いつかなくて…」
「それならこれが良いよ!これをこうやって………」
その後は麻里を絵梨佳の住むアパート…あの夜を終えてから立て壊し予定だった団地からペット可のアパートに凛子と住んでいるらしい。
話は逸れたが、そのアパートに麻里を送り凛子に菓子折りを渡してから暁人は再びKKのアジトに向かう。麻里に教わったいたずらをいつするか考えながら…。
KKのアジトに着くと一呼吸して扉を開ける
「お邪魔します」
リビングに行くとKKは窓を開けてベランダで煙草を吸っていた。
「KKご飯食べた?」
「ん?あぁ、いや、まだだな」
「なら軽く何か作るよ、僕もまだだったから丁度良かった」
そう言い暁人はキッチンで晩御飯を作り出来立てを2人は食べ風呂に入り、さて、寝るかとなった時KKは暁人を見て
「お暁人くんは俺にいたずらしたいって思ってないのか?」
「え?思ってないよ!僕もう子供じゃないし」
「俺からしたらまだガキだがねぇ…あぁ、いや、俺の立派な相棒兼恋人か」
いたずらをする予定だった暁人は突然のKKの言葉にドキッとしたが平然を装いながら否定したら今度は照れるような事を言ってのけるKKの腕を軽く殴って布団に潜り込んだ。
「おいおい、怒ったのか?」
「怒ってないし明日早いからもう寝るの」
側から見たら拗ねてるようにも見えるがKKにとってそれは愛おしさが増すだけで暁人の額に口付けると布団に横になり2人とも眠りについた。
翌朝暁人はかなり早い時間に起床していたずらを実行しようと麻里に借りたものを使用しKKの肩を掴み軽く揺すった。
「んん…まだ早いだろ…」
「KK、僕もう行くけど、冷蔵庫に朝ごはんあるから食べてね」
それだけ言うと暁人はKKの頬に口付け慌てて外に出ていった。
KKは暁人の珍しい行動に一気に目を覚ましボリボリ腹を掻きながらリビングに向かうと既に凛子が作業をしていた。
「あら、おはよう。暁人くんに朝ごはんご馳走になっ……朝からお熱いことね、ご馳走様」
「はぁ?」
「鏡見てきなさい」
それだけ言うと凛子は再び作業に戻りKKは言われた通り洗面所の鏡を見て目を見開いた後すぐニヤついた。
鏡に映る自分の頬に薄紅色のキスマークがついていた。そう、暁人の可愛いいたずらだったのだ。
これは帰ってきたら寝かせらんねぇなとKKは思うのだった。
一方暁人の方は玄関から出てすぐしゃがみ込んで真っ赤になった顔を隠した。
手には薄紅色のキャップがついた口紅を持ちながら…