発熱沢お持ち帰りの続き「美咲」
「やだ」
具合が悪い美咲を家に連れ帰った後、会議を早めに切り上げたこころ達三人も追うように私の家へお見舞いにやってきた。
その頃には既に美咲は私のベッドで眠っていたのだが、私のブレザーを抱き締めて眠っていたのを三人に見られてしまったのが、本人は相当お気に召さなかったようだった。
「美咲、もう三人とも帰ったよ。お大事にって」
「絶ッッッッ対、でない……!!」
さっきから呼んでいるのだが、布団に包まった美咲は依然として出てこない。
困ったな。冷却シートをそろそろ替えてあげたいのに。水も飲ませたい。
「ほんともう、やだ、あんなとこ見られて、あり得ない」
勿論三人とも、そんな美咲を揶揄うような性格ではない。ただ、口を揃えて可愛いと言うだけだったのだが。……それが相当堪えたらしい。私としては可愛らしい姿をもっと見ていたかったし、偶には儚い美咲の姿を自慢してやるのも良かったかもしれない、と思っている。口に出したらきっと怒るが。
「……美咲、そろそろ出ておいで」
「やだってば」
「熱も計りたいし、冷却シートも替えたいのだが……」
肩を落として心配していることを伝えれば、美咲が静かになる。私のこの声音に彼女が弱いことを、私自身がよく知っていた。布団がもぞもぞ動いて、中から真っ赤な顔をした美咲が出てくる。
「おかえり、美咲」
「…………」
恨めしげに私を見上げてくる視線は、残念ながら全く怖くはない。まずは体温を計ろうと布団を少し捲って、
「…………あ、」
依然としてブレザーを抱き締めたままであることに気付いた。私の視線に美咲が気付いたようで、みるみるうちに顔が更に紅く染まって———
「———儚い」
緩むのを抑えきれてない私の顔に、今度こそ勢いよくブレザーが投げられた。