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    kourou_akat_v

    紅楼です@kourou_akat_v
    主な創作は文スト、推しは敦くん、推しカプは芥敦。メインは文字書きですが、最近絵を描く面白さを思い出しました。まだまだ未熟ですけど、自分なりに頑張って&楽しく描いていきたいと思ってます(*´ω`*)

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    kourou_akat_v

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    過去“絵”じゃなくて、過去“話”ですね。
    小説もお試しでアップです。

    #文スト腐
    literatureLover
    #芥敦

    路地裏に至る病〜虎の瞳―——トン、トトン
    ———トットントン、トン

    「如何した敦、手が止まっているぞ」
    とある爽やかな昼下がり、大きいのも小さいのも事件らしい事件の依頼が無い穏やかな武装探偵社にて。作成途中の報告書を目の前にした儘の敦は上司の国木田独歩からそう指摘される。
    「顰めっ面をして何やら考え込んでいる様に見えたが……」
    「え?」
    「指を口元に当てて、こう、トントンッと叩いていたぞ」
    「!!??」
    国木田の仕草を見て、敦は自分の無意識の行動にドキッとした。思い当たる節がありまくる。
    「そそそ、そんな事をしてましたか、僕!?あ、いや、昨日の仕事の経緯を詳しく思い出していただけですっどう報告書に纏めようかなって!!」
    「そうか、確り励めよ。呉々も迷惑噴霧器の様な人をおちょくった報告書など出すな」
    「ははは……頑張ります」

    ******

    「はぁ……無意識に触っていたなんて、滅茶苦茶意識しちゃっているじゃないか僕……」
    無事に報告書を提出し終えた敦は、其の後も細々と雑務を熟し、定時に上がった。其の足で雑多な建物と其れ等の室外機が無造作に、けれどどこか整然と並んでいる印象のある路地裏へと向かっている。まるで街中の表も裏も知っている野良猫の様に、何の目的も目印も無さそうに、然し迷いの無い確りとした足取りで向かった先はほんの少し開けた秘密の場所。否、秘密の場所と思っているのは敦だけかもしれないが。
    「いる訳、ないよなぁ……」
    ポツンと呟いた声は誰にも届く事はなく、黄昏色の空気に溶けていく。ほんの少しでも期待して、期待が外れたらがっかりしている自分が酷く身勝手で滑稽に思えた。フニフニ、フニ、と敦は敢えて意識して自分の唇を指の腹で押す。そうして自身の指なんかでは到底物足りない触感に飢えている事に改めて気付かされてしまう。
    「無意識かぁ……芥川の莫迦……って、ぅわっ!!??」
    「莫迦などとはまた一方的に言ってくれるな、人虎」
    「ぅぇえっ!芥川っ!?」
    ピリッと嫌な直感がして反射的に『月下獣』を両足に発動して其の場から飛び上がると、敦がいた場所の地面から無数の黒い大きな棘が生えている。顔を歪めた瞬間にグンッと覚えのあり過ぎる勢いで後ろに引っ張られると、案の定腹の立つ顔が其処にあった。今日は逆さ吊りにされていないだけマシだと思おう。
    「お前さぁ、此れが1ヵ月振りに顔を合わせた恋人に対する態度かよ」
    「愚者が、貴様如きには此れでも十二分に過ぎる。其れとも何か?絵物語の様にしろ。とでも言いたいのか?」
    「芥川が?……う〜ん、其れは其れで、気色悪いかも」
    絵物語の恋人の様にキラキラと浪漫的な自分達を想像してみたが、思った以上に似合わないし、酷いものしか浮かばない。うん、自分達は此の儘で丁度良いのかもしれない。
    僕が想像した事を察した芥川が、中途半端に宙に浮いている状態から無造作に壁側に放り投げやがった。空中で身体を捻って壁も使って難なく着地したが、僕は猫じゃないと文句を言おうと顔を上げたら数瞬の間に距離を詰められていた。驚きに僅かに目を見開き、咄嗟に身動ぎした身体は混凝土の壁に当たる。あ、と思った時には顎を掴まれる。其の手が意外な程に優しくて、文句の言葉がひゅっと喉の奥に引っ込んで行った。
    「あ、芥川……?」
    「黙れ」
    辛うじて出した声には素気無く。互いに言葉も無く、ただ芥川に指の腹で唇を何度も何度もなぞられる。控え目な吐息すら憚られる空間に、不意に自分以外の吐息が重なった。
    「っ、んんっ……ふ、ぁっくた、ん……」
    芥川に口付けされたのだと判った瞬間には引っ込んだ文句の言葉は霧散した。
    自分のものよりも僅かに薄く硬い唇、低めの体温、血と硝煙が微かに混じった芥川の淡い匂い。無意識に求める程に乞うていたものが手に入ったのだ。歓喜で心が密かに震えた敦は夢中で口付けに応える。
    ぼやける程に近くにある芥川の静謐な美しい顔(かんばせ)、其れを裏切るかの様な苛烈な瞳は口付けの最中でも閉じられていない。何時もは無機質な黒曜石の瞳が奥底に爛々とした光と熱を持って敦を覗き込んでいる。誰にも見せない様に隠している胸のどす黒く汚い部分まで余さず暴いてやるとでも言いた気に。
    ———ゾクゾクゾクッ
    足元から背筋に、背筋から脳にまで電流が走った。嗚呼、此の男にならば暴かれても良いかもしれない、此の男にしか見せられない。敦は芥川に明け渡す心地で瞳を閉じると口付けが深まった。
    「は、あぁ、ぁっ……ん、くちゅ、ちゅ、んぁっ!はっぁぁ、じゅ、じゅる、ぁむ、んんーっ!」
    敦の口内で二人の舌が激しく絡まり、縺れ合う。自然、交わす水音も大きく激しくなるが、其れすら耳を犯す媚薬だ。幾度も幾度も角度を変えて、合間に呼吸を少ししては呼気すらも貪る。
    「あ、く……たっ、んむぅっ!ん、ん、っひあぁぁっ!」
    「ちっ」
    口内の弱い箇所を続けて嬲られ、酷く感じ入ってしまった敦の身体がズルリズルリと落ちていき、遂には膝も崩れ落ちそうになった。慌てて縋る先を求めた両腕を芥川の首に回す事で落下を塞ぎ、芥川も敦の両足の間に膝を差し込んで支えてくれた。
    「ぁ、ぁう……?あ、り、がと」
    「此の程度で左様な程に感じるのか。相変わらず快楽に弱い身体だ」
    「だって……1ヵ月振りなんだから、仕方が無いだろ。芥川、お前は?」
    「そうだな……貴様が我にも無く浮かんでは唇に触れていた程度には」
    「え?おな、じ……?」
    「無駄口は仕舞いだ。僕は未だ到底足りておらぬ」
    「僕も……足りないっ、全然っ!もっ、っん……ふぅ、ぅぅん、あく、ったがわ、もっと……」
    ———もっとお前を寄越せ
    僕だけ明け渡すなんて割に合わない。お前も僕に寄越せと腕に力を込め、負けじと積極的に仕掛ける。
    異能力で殴り、掴み掛かる様に舌を激しく奪い合い、切れるギリギリの強さで噛み付き。芥川の呼吸や時機などお構い無く角度を変え、押し返して芥川の口内でも貪り、貪られる。唇も舌も触れていない時が無い位に互いに夢中で口付けを交わす。
    「はふっ、は、ぁ、あんんっ、いっ……!ん、ちゅ、じゅる、っうぅん……あ、く……りゅう……」
    「ふっ、は……あつ、し……」
    其れは夜の帳が降り始めても、僅かな呼吸の音と絶えない水音が狭い路地裏に響き続ける。


    やっぱり僕達には絵物語の様な浪漫的なのは似合わない。



    〈終〉
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