「ん〜〜」
「どうしたんだい?」
脚本の参考にしたいからと僕の家へ訪れた司くんは、ソファに座っている。デスクで作業していた僕は止まない呻き声に手を止めて振り返った。
「ちょっとここへ座ってくれないか」
司くんは自身が座っている隣をポンポンと叩きながら言った。脚本で詰まったのだろうか。僕は言われるままそこへ腰掛ける。
「何か――」
尋ねかけたところで司くんが抱きついてきた。ぼすりと僕の胸に金色のふわふわが埋まる。
「……あったかい」
くぐもった声が辛うじて聞こえた。
「部屋、寒かったかい? 室温を上げようか?」
「いや、そういう訳では無いが……」
邪魔をしてすまなかったと、司くんは離れてるために腕の力を抜いた。
「――ダメ」
なんだか急に惜しくなって、僕は急いで抱きしめ返した。
「類?」
「折角、作業を中断したんだ。そんなに都合よく追い返されるのは業腹だなあ」
「……そうか」
じゃあ、と言って司くんは改めて僕を抱きしめた。
「温かいね」
「ああ」
僕らはしばらく、何をするでもなくそうしてくっついていた。チラリと盗み見たテーブルの上には真っ白な原稿用紙が散らばっていた。