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    シアン

    @siansian1079

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    POIPOI 15

    シアン

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    の続き

    リオノルのエイリークルートです(重要)
    成人指定にならないようにしましたのではぐらかしがいっぱい。

    (無題) 人を好きになった事はないのはノールも同じだった。暇潰し程度に寓話は読むことはあって、その中には恋愛を取り扱うこと話もあったが自分の胸の中にそういった感情を抱いたことが今まで生きてきた中で一度もなかった。
     初めて行なった情事もお互いしたことがないせいで何が正しいかわからないまま終わったような気がする。人が繁栄する過程で避けては通れないこの行為は秘匿のうちになされている。まさか他人がしているのをじっくりと見たりするなどあるわけでもない。みんなどうしているのだろうか、何をしているのだろうか。そして自分たちのしていることは皆していることなのだろうか・・・?
    この行為の意味はよくはわからない。でも人と抱きしめあったりすると落ち着く。責任のあることをしている、相手はさらに責任のある立場にいる。その重圧が解放されて自由な気持ちにさせてくれるような抱擁と愛撫だった。
     多分一度経験すればいい筈だった。しかしそれは一度だけでは済まず、何度とか繰り返し行われることになった。
     二度目三度目と繰り返すうちに要領を得てきたのか、次第にこの行為で性的な快楽を見出せるようになってきた。最初はベットの上で肉体をすり寄せて互いの体温を確かめて合うことから始まる。
    リオンの唇がノールの口にそっと触れる。
    「ふふっ・・・ノールの唇カサカサしている」
    リオンが何気なく言ったことに対してノールは自分の口を抑えて赤くなった。
    「すみませんっ。こういったことにはあまり気にしたことがなかったものですから・・・」
    「え?なんで謝るの?あんまり乾燥してると割れて血が出たら大変かなって思ったから言っただけなんだけど」
    ノールは自分の洗顔に関しては深く考えた事がなかったがリオンにこうして触ってもらうことになってしまったからには気を遣わなくてはいけないのではないかと考えた。
     いや、顔だけじゃなくて髪とか身体全体に関して全て。
    「・・・リオン様からはとても芳しい香りがします」
    ノール自身の美容関係の疎さが恥ずかしくなってしまう。
    「あんまり気を遣った記憶はないけど褒められると嬉しいね。不衛生にならないのは当然だけどいい匂いがする植物とか少し詳しいのもあるかな」
    「お恥ずかしい限りです・・・」
    リオンはそんな自虐的になっているノールの身体を押し倒して皮膚の潤いが足りない唇に深く重ねる。
    ノールは少し申し訳ない気持ちで自分の口の中に入ってくるリオンの舌を受け入れた。
    舌のざらざらとした表面で自分達の唾液が混ざり合っていく・・・。
    幸せだなと思っていつもリオンの中に堕ちていく。

     しかしいつの日からかそんな情事をする事がなくなっていた。そしてそれは飽きられたのか、嫌われたのかとずっと思っていた。

    「あのさ・・・エイリーク・・・僕、ずっと勇気がなくて言えなかったけど・・・きみのこと好きだった・・・」

    エフラムと共に行くことを決めた時からこうなる覚悟が出来ていた。自分が、いや自分でなくても誰かが彼を討つのをこの目で見ることになる。魔石を手にした時から彼は死んだと思えばいいとしてもいざこうして彼の死を前にしたら悲しい気持ちにならずにはいられない。
    そして死を前にして彼は今なんと言った?
    自分を助けてくれたエフラム王子の双子の妹、性別は違えど顔がよく似ているエイリーク王女が好きだったと告げている。
     なんの情緒に浸る時間もなく、リオンの亡骸が消えた。古の魔王が自分達の前に姿を現す。
    その禍々しい存在を打ち倒さなければ、それぞれの国どころかこの大陸の未来すらないのである。

     魔王討伐を経てそれぞれの場所に帰っていく。グラドは敗戦国となったのだからこれからの戦後処理が待っている。いやそれだけではない。もっと大変な未来がこの国を待っている。
     流石に魔の神殿からすぐには祖国に帰れない。数日くらいはかかるだろう。
    祖国が同じものたちと集団でその旅路を同じくしているが、なんとなく輪に入るのが躊躇ってしまう。時折デュッセル将軍やナターシャが気遣いながらも話しかけてくるが社交辞令のような言葉しか出なかったのが大変申し訳ない気持ちになった。
     夜も随分遅い時間、ふっと目が覚めた。順調にいけば明日の昼過ぎくらいにはグラド城内に入れる。城に入ればやることがたくさんあるので今日しっかり休んでおかないといけない筈なのに小さく光る夜の星が見たくなった。

    寝床から外に出ると魔は去り、随分と久しぶりに澄んだ夜空が広がっている。

    不意にふっと消えた星が見えた。
    「流れ星・・・ですか」
    初めて見た。夜空を瞬き一瞬ににして消えるなんて儚い光なんだと思った。

    「・・・ふぅ」
     嫌われたか飽きられたかと思っていた。いつの頃からか夜の寝床に呼ばれなくなったのはきっとそうだと考えていた。

    ーーーーー

    「あまりこんなことにつき合わせてしまうのはよくないよね、でも自分でもわかってるんだ。きっと僕は恋とか愛とかよくわからないまま人生が終わりそうな気がするって」

     癖で緩やかなカーブを描いた紫色の髪が自分の顔にあたりそうなくらい近くある。
     この国の皇子なのだから必ず王妃を迎えられる日が来るのだろう。たとえ自分の気持ちが向かなくても。

    「リオン様の奥様になられる方は幸せでしょうね」

    「大切にするよ、こんな僕のところに嫁ぐ人だもの。」

    「そうですね、私とこんなことしてられませんよ」

    ノールがそんなこと言ったのが心に刺さったのか酷く悲しそうな顔をして黙ってしまった。

    「意地の悪いことを言いました。私はいいんですよ、リオン様が幸せなら」

    「・・・ごめんね。僕は」

    一緒に横になっている側で何かを言いかけてやめたリオンはノールを抱きしめた。
    いつか醒める夢のようなものだと思った。

    ーーーーー

    リオンは恋も愛も知らないで終わると言っていたのだ。
    そんな彼が恋をしていたのだ。恋をした相手のことはよくわからない。でもリオンが恋をした相手ならきっと素敵な方なのだろうと思った。
    きっとリオンは彼女に恋をしたからもう自分と情事をすることをやめたのだ。自身の気持ちを捌け口もしたくはないのもあっただろうし、ノール自身の気持ちも弄びたくもなかったのだろう。

     元々終わりのあるものだと思えばそれでいいと思った。しかし思ったより深くまで入り込んでしまったのは予想外であった。
    ずっと胸につかえていたものが綺麗に落ちてしまって、涙がポロポロ出てきた。
    悲しさ、寂しさ、いやリオンが死んだという事実がいまここで切なく胸を締め付けた。抱きしめたあの身体が綺麗になくなってしまった。温かいと感じて抱いたあの身体が魔王の生贄になってしまったのが憎くて悔しい。 
     これが魔に力を求めた人間の末路。だとしたらもう二度とこんなことが起きてほしくはない。魔王の肉体は滅したが聖石には魂が残っている。何か起きない可能性がないわけではない。

     悲しみのままに沈んでいると、また夜空に瞬く星が一つ流れた。新月が終わってすぐの夜空は月の光がなく普段は月明かりでみえないような小さな星が見えている。

     結局今も恋も愛も自分は知らないままだが、恋の味を知ったリオンはどんな日々だったのだろうか。恋愛の寓話の主人公のように些細なことでも嬉しいこともあっただろうか、それとも苦しくて辛いこともあっただろうか。

    自分には無縁のことだ。それは過去も今も、そしてこれからもなさそうなことだ。

    永遠に流れ落ちてくると思った涙もいつの間にか止まっている。いつまでもこうしてはいられない。

    「あなたの理想は潰えたましたが、私の胸のうちにだけでもそっと置かせて下さい」


    それは海や川の航路に建てる澪標のように
    せめて自分の生きている意味としてあり続けてほしい。
    もうこの先も自分の小さな秘密は永遠に誰にも語ることはないだろうから。
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