第一話 一
「初めまして、雪です。」
そう言った彼は涼しげな髪色と目の色が印象的で、ここに居る誰よりも無垢だった。
「ホストクラブ?」
話があるとわざわざ執務室まで自分を呼んで、こんなくだらない話を持ちかけてくるなんて、どういう神経だと疑った。
たまには息抜きをしなさい、とその老人は言ったが、それとホストクラブとがどんな関わりがあるのだと呆気に取られているうちに、瞬く間に日付が決まり、そして今、駐車場へと車が着いた。
「神道くん、安心したまえ。ここの店はちゃんと顧客の秘密を護るから」
でなければ困る、心の中で悪態をつきながら、口からはおべっかを吐く。仕方がない、どこかのタイミングで何か適当に理由をつけて帰宅しよう。
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