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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    呪専
    レモンの味と言えば。タラシの傑クン相手にがんばる悟クン
    GEGO DIG. SUMMERでpixivにて展示した短編になります。

    #夏五
    GeGo

    【若草色】 レモン ベッドを背凭れにして床に並んで座り、机に置かれたお菓子やペットボトルに手を伸ばしながら、些か退屈になってきた昔の映画を観ていた。淡々とではなく、きゃっきゃっとした恋愛ものだが、何で選んでしまったのか、今では覚えがない。五本借りたら一本無料のキャンペーンにつられて借りただけだろう。五条が何の気なしにひょいっと掴んでいた筈だ。そんな中――。
    「これ、本当か」
    「これって」
    「ファーストキスはレモンの味」
     視線の先ははテレビのまま顎をしゃくって合図をした五条に、ぷはっと小さな笑い声で夏油が答えた。
    「しないでしょ、レモンの味」
    「しないんだ」
     少し残念そうに声のトーンが落ち、肩越しに振り返った夏油が見たものは、僅かに眉を潜めてテンションが下がった親友の姿だった。
    「えっ。したことないの」
    「えっ、――傑は、あるんだ」
     目に映る表情で察したらしい。むっとして口を尖らせた様子からして、したことがないと言っているようなものだ。その様子に半身を捻って身を屈め、五条の顔を覗き込むように近づけて、声を潜めた。
    「悟はするかもしれないよ、レモンの味。してみる」
     耳元に吹きこまれるように囁かれた普段より甘く響く声は、声の主に寄り掛かるようにだらけていた五条の背筋を、ぞわりと震えさせた。
    「してみるって、相手、いないし」
     緊張ゆえか、掠れて震える声を他人事のように聞きながら、こくん、と生唾を飲み込んで、覗き込んでくる漆黒の瞳が、艶やかに濡れて、五条は目が離せなくなった。
    「私と」
    「はあっっっ、えっ」
     混乱し始めた五条をよそに、頬に手を滑らせ小首を傾げた夏油が、内緒話をするように声を潜めたのは、集中して自分の言葉を聞いて貰うためだ。
    「私じゃ、イヤかい」
     捨てられた子犬のようにさみしげな声の背後では、盛り上がりの場面に差し掛かっており、抱きしめられたヒロインが恥ずかし気に頬を染めながら頷いている。
    「イヤ、じゃ、ない、けど」
    「おいで、悟」
     するりと頬を滑らせた指は、軽く耳朶を弄った後、肩を抱いて身を寄せるように誘う。とくん、と高鳴る心臓と夏油の眼差しに逆らえず、誘われるがまま向き合うように半身を捩ると、するりと腰も抱かれた。
    「えっと、すぐる……」
    「大丈夫。気になるんでしょ」
    「でも」
    「私は、悟としてみたいな、キス」
    「なんで」
    「なんでだと思う」
    「んっ」
     ふふっと意味あり気に微笑む夏油は機嫌が良さそうで、ひとり、どきどきと早鐘が胸を打つ五条には、細かいことまでは考えられず、じっと夏油の唇を見てしまう。
    「悟、目を閉じて」
    「え」
    「開けたままでもいいけど、どうする」
     普段の優等生ぶりからは想像がつかない艶やかな夏油の声に、目の前の親友がかっこよくて、それはそうだ、親友だと思っているのは、夏油だけで、親友以上の想いを抱いている相手に、そんなことを言われたら。傍若無人の五条でも断り切れないし、恥ずかし過ぎて、目なんて開けてはいられない。全身が心臓になったようだった。
     きゅっと閉じたついでに、肩にしがみつくように腕を回した。
    「ふふ、かぁわいい」
     微かに聞こえた声は、気のせいだろうか、かわいいって、俺のこと、か。
     うそ。
    「悟、大丈夫だから、肩の力、抜いて」
     五条の肩を抱いていた腕が、首筋から項に周り、頬をひと撫でして、包み込むように添えられた。
    「さとる」
     甘く優しい呼び声はマシュマロのようで、目の前に影が差すと、ふわり、と夏油の匂いが強くなり、幾度となく想像した、やわらかくしっとりとした感触を唇で感じ、束の間だけ、触れ合って離れていった。
    「すぐ、る――」
     上擦った声は自分の声とは思えなくて、焦れば焦るほど、頬に熱が溜まっていくのがわかる。
    「さとる」
     嬉しそうに名を呼ばれて、おそるおそるといった様子で、固く閉じていた瞼を開いた五条の瞳には、零れるような笑みを浮かべた夏油が映っていた。
    「私も、レモンの味、したかも」
    「えっっ、俺、どうしよう、ポテチ」
     途端、泣き出しそうな声を出した五条とは対照的に、吹き出しそうになった夏油がごめんね、と謝った。
    「私も、ポテチだったよ。今度はレモン食べた後にしよっか」
    「こん、ど」
     疑問形で途切れた言葉に、同じく質問で返す。
    「イヤ、だった」
    「いやじゃない」
    「よかった」
     その声だけが心の底からの安堵と緊張を解いたような声で、そう言えば、と五条も質問で返した。
    「なんで、傑は、俺と、したかったの、キス」
     最後の二文字だけは消えそうな小声で掠れたけれど、違わず夏油には伝わった。
    「それは、悟が考えてみて」
     
     後日、「そんなの、明白だろ。よかったじゃないか、五条」と硝子に笑われた、今の関係を進展させたかった五条と。
     硝子に「どうしようじゃないだろ、何がはやまっただ、クズ」と叱られ、我慢しきれず手は出したのに言葉が出ない夏油がいたとかいないとか。

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    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
    3206

    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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