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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    夏五
    教師×教師の平和軸
    支部に掲載中の『巡る季節 巡る想い』から10月のお話。
    伊地知さん視点で飲み会のお話。おとな組で賑やかに^^

    #夏五
    GeGo

    【神無月】「この時季はどこの地方に行っても収穫祭で賑やかでいいよねえ――。たまには僕たちも飲みに行こうよ」
    「何言ってるんですか。あなた下戸でしょう」
    「えぇぇ――、そんなの雰囲気だよ」
     珍しくみなさんお揃いの職員室で、ひとり楽しげに言い出した言葉に、速攻突っ込みを入れてくださった七海さんに感謝したい。僕たちの中には、否応もなく私も含まれているのは、火を見るより明らかだ。
    「まあ、悟が飲まないって約束できるなら、いいんじゃないの」
     あっ。思わぬところに伏兵がいた。昔から掴みどころのない先輩ではあるけれど、五条さんを止める係りを担っている場合が、多くもなかったな、うん。混ぜるな危険でしたね。
    「するする。たこわさとか、もずくとか、つまみっぽいものが食べたいんだよねー」
    「昨日、テレビでやってたお店、おいしそうだったからね」
     ああ、そういうコトですか。まあ、一緒に住んでるんだから、同じ番組も見るでしょうし、外食すれば自炊もしなくて、ってどちらが作ってるんでしょうか。いえ、知りたくはないですけど。
    「硝子もくるかな」
     家入さんも来られるなら、参加もやぶさかではない。
    「ストレスも溜まってるし、声掛ければくるんじゃない」
     いえ、寧ろ、あなたたちと一緒の方が、あっ、でも、同期で仲は良さそうでしたね。
    「私は」
    「七海も行くでしょ。たまにはいいじゃん、おつかれサマンサー。週末ぐらいさ。伊地知もね」

     予約を入れた店内に入れば、揚げ物とお酒と煙草の匂いが混ざり合った喧騒にどこかほっとする。陽が沈めば冷え込むようになったこの季節は、まだ寒さにも慣れず、店内の灯りや人の気配に安堵するのかもしれない。
     高校生の浮かれたカップルみたいに、夏油さんのマフラーをふたりで巻こうとして、家入さんに止められた五条さんが、借りたくるくるとマフラーを外している。

    「だから冷えるよって朝、言ったのに」
    「朝は食べて帰るつもりじゃなかったしぃ」
    「私のマフラー、使いなよ」
     そう言って外そうとした手に、五条さんの手が重なって、得意げに微笑んだ。
    「いい。一緒に使お」
     あぁぁぁぁ。だから、一緒にきたくなかったのに。ふたりで出掛ければいいじゃないですか。喉元まで出掛かった言葉は、荒れた胃に落ちていった。九月を過ぎるといつも以上に親密さを増す五条さんは、ふたりきりだけではなく、同期や後輩である私たちとも一緒の時間を過ごしたがる傾向にある。それに関しては、詳細は不明な以上、何事もないようにしているのが一番だと思っている。

    「「かんぱーい」」
    「むしろ、おつかれさまじゃない」
    「そうですね」
     とりあえずビール、なんて事もなく、各自好きな飲み物を片手に、形ばかりにグラスなり、ジョッキなり、お猪口なりをあわせると、景気よく食べて、呑んで、喋り出す。
     基本的にはサラリーマンと立場は変わらないのだから、同僚が集まれば会社への愚痴になるし、同じ学校に通っていたのだから、昔話にも花が、綺麗なだけではない花だけれど、咲く。
     基本は手酌でも、隣に座った家入さんから、呑んでる? と注がれれば、つい杯を重ねる。ぼんやりと酔い始めた目の前で、距離感ゼロなふたりが楽しそうに笑っている。左隣で七海さんが相変わらず渋い顔をしているのに、眉間に皺は寄っていない。
     超過勤務が多すぎます。残業なんてクソです。そんな文句の間に、ウチの生徒は優秀だよねー。なんて話も挟み込まれる。ほっこりしていると、伊地知は要領がわるいんだよねー。なんて文句が飛んで、やっぱり参加しなければ、と苛ついたところへ表情に出ていたのかフォローが入った。
    「伊地知、少し、お茶飲んだ方がいいね」
     ほろ酔いなのか、ぺたりと張り付いた五条さんをそのままに、夏油さんがあまり寄り付かない定員さんを呼び止めた。顔を拭こうとしたおしぼりを落とした時に見てしまったのは、机の下で恋人繋ぎをした手で、そりゃ、離れもしないですよねとため息ついてしまった。
    「ウーロン茶とメロンソーダを一杯ずつ。ソーダってアイス載せられますか。あ、じゃあ、それで」
     愛しそうな眼差しを向ける様子を見ながら、五条を甘やかすことで、自分も甘えているんだよ。そんなことをぽつりと家入さんが呟いていたのを思い出した。
     
     神も仏のないようなこの業界で、神のような五条さんを、神だと思っていない僅かな人たちは、どんな思いで同じ場所に立っているのだろうか。


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    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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