あるいは、ご褒美「……岩王帝君の信仰が、そう容易く廃れるなどとは思いません。ですが、人間は百年生きることさえ難しいのです。迎仙儀式が失われ、帝君が璃月に姿を現さなくなってしまったら……」
信仰は、はたして千年続くだろうか。──かつて戦いの中だけではなく信者を失うことで、大陸から消え去っていった神々のことを何度となく聞いている。今でこそ璃月で岩王帝君の存在は磐石のものだけれど、誰も見たことのない存在となってしまった神を人々は信じ続けてくれるだろうか。
あるいは、人々の興味は新たなモラクスに移ってゆくのではないか。
「盤石もいつかは崩れる。何、そう悪いことばかりではない」
静かに涙をこぼし続ける甘雨の頭を、優しく鍾離が撫でた。声こそ上げなかったものの子供のように泣く麒麟に、それは悲劇ではないのだと彼は伝えてやりたかった。
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