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    鍾離先生と甘雨ちゃんがいちゃついてるだけのお話。W復刻記念のようななにか。

    #鍾甘
    zhongGan

    あるいは、ご褒美「……岩王帝君の信仰が、そう容易く廃れるなどとは思いません。ですが、人間は百年生きることさえ難しいのです。迎仙儀式が失われ、帝君が璃月に姿を現さなくなってしまったら……」
     信仰は、はたして千年続くだろうか。──かつて戦いの中だけではなく信者を失うことで、大陸から消え去っていった神々のことを何度となく聞いている。今でこそ璃月で岩王帝君の存在は磐石のものだけれど、誰も見たことのない存在となってしまった神を人々は信じ続けてくれるだろうか。
     あるいは、人々の興味は新たなモラクスに移ってゆくのではないか。
    「盤石もいつかは崩れる。何、そう悪いことばかりではない」
     静かに涙をこぼし続ける甘雨の頭を、優しく鍾離が撫でた。声こそ上げなかったものの子供のように泣く麒麟に、それは悲劇ではないのだと彼は伝えてやりたかった。
    「俺はお前より永くは生きたくないからな」
    「──帝、」

     数秒間時が止まった思いがした。
     衝立にほぼ遮られているとはいえ、給仕や客が通りかかる茶館の一角。もちろん、呼んではいけない名を口にしかけた自分が悪いのだとは分かっているけれど、──しかし。

     唇は触れ合い、甘雨が完全に名を飲み込んでしまうまでそれは続いた。茶をつぎ足しに来た給仕が慌てて踵を返した気配があり、甘雨の心臓がさらに跳ね上がったけれど『往生堂の客卿』の方はまるでお構いなしである。
    「次もこの手を使おう」
    「………、……先生……」
    「それとも、稼業人の俺では──玉京台で栄えある役目を務めるお前に、釣り合わないだろうか」
     ──煙緋さんの天秤を貸してほしい。絶対に自分の価値の方が塵のごとく軽いというのに、この方は何を言っているのだろう!
     言い返したかったものの、下手な言葉を紡げば再び『お仕置き』にあいそうで甘雨の唇は声音を作りきれず、戸惑って動くばかり。楽しそうに眺めていた鍾離はそこへ指先で触れ、彼女がもう泣き顔ではないことに満足した。

    「……私も仕返しを、します」
    「それが公平だな。楽しみにしている」
     彼の笑顔はどこまでも穏やかだというのに、どうしようもない敗北感をもたらしてしまうのだった。
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    💘💘💘💘💘💘💘💘💘💘❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤💘
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    oz_on_e

    MEMO #鍾甘ワンドロ に先日投稿したものです。
    800年程度前、ちょいちょい璃月で宴会をしていたという初代七神エピソードより。
    明らかになっていない時系列も多いので捏造を含みます。いずれはもう少し長い話として書き直したい。
    「──来年、ですか? おそれながら四回目の宴では皆様より、百年前には通達がほしいと仰られておりました。あまりに急なのでは……」
    「あの時は忘れていたが、もうじき絶雲の千年桃花が咲く時期になる。これを逃す手はあるまい」
     厳密に言えば岩王帝君が『忘れる』ことはそれこそ摩耗でもなければありえないが、単純に一時的な失念をしていることはあるらしい。
     よい宴になるだろう、と、すでに楽しげな顔で酒の手配についてなどを語りはじめた主君を前に、甘雨は思いとどまらせることを諦めた。──またいくつかの国からは文句が届くだろうが、こうなっては早めに日取りを決めて各国に知らせを出すしかないだろう。

     ──時は、璃月港に不思議な旅人が訪れるより千年足らずを遡った、岩王帝君が健在であった時代。魔神戦争が終結し、国の姿も現在の形をあらわしはじめた頃。初代・俗世の七執政──七柱の神々は璃月の地に時折集っては語らう慣習が出来ていた。
    1055

    oz_on_e

    MEMO浮世の錠フレーバーに関連する月海亭秘書さんの半回想モノローグ。恋にもなりきれない思慕。セリフらしいセリフもありません。雰囲気で読んでください。※以前にTwitter連投したものの微調整になります。
    独白かつてより、その姿は余りに目にする機会が多かったものだから──天神像ですら"其れ"を模すものとなっている。石錠を眺め、諦めることなく解析を試みようとするあの方の肖像。”忘れていいのだと言われたのだがな”と、あの方は昔呟くと、自嘲の様に笑ったことを覚えている。
    私の記憶の始まりでは、まだその姿を見ることはなく……あの方は敵だらけの大陸で弱く脆い人々の守護者として、恐るべき力を震い続けた。それこそがあの時代に求められた神の強さだったけれど、山岳の奥で静かに暮らしていた幼い私は畏怖を抱いてしまい、訪れる彼に自ら声を掛けることなど、しばらく出来なかった。
    留雲真君の足もとに隠れ、震えている私を困った顔で見下ろすあの方の姿を忘れられない。──今のように、何気ない言葉を口に微笑み頭を撫でてくれるような所作はあの頃には身に付けておられなかった。勿論、終わりの見えない戦いに身を投じ槍を握るあの時期に、穏やかさを得る余裕などなかったはず。
    982

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    oz_on_e

    MEMO #鍾甘ワンドロ に先日投稿したものです。
    800年程度前、ちょいちょい璃月で宴会をしていたという初代七神エピソードより。
    明らかになっていない時系列も多いので捏造を含みます。いずれはもう少し長い話として書き直したい。
    「──来年、ですか? おそれながら四回目の宴では皆様より、百年前には通達がほしいと仰られておりました。あまりに急なのでは……」
    「あの時は忘れていたが、もうじき絶雲の千年桃花が咲く時期になる。これを逃す手はあるまい」
     厳密に言えば岩王帝君が『忘れる』ことはそれこそ摩耗でもなければありえないが、単純に一時的な失念をしていることはあるらしい。
     よい宴になるだろう、と、すでに楽しげな顔で酒の手配についてなどを語りはじめた主君を前に、甘雨は思いとどまらせることを諦めた。──またいくつかの国からは文句が届くだろうが、こうなっては早めに日取りを決めて各国に知らせを出すしかないだろう。

     ──時は、璃月港に不思議な旅人が訪れるより千年足らずを遡った、岩王帝君が健在であった時代。魔神戦争が終結し、国の姿も現在の形をあらわしはじめた頃。初代・俗世の七執政──七柱の神々は璃月の地に時折集っては語らう慣習が出来ていた。
    1055

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    MEMO浮世の錠フレーバーに関連する月海亭秘書さんの半回想モノローグ。恋にもなりきれない思慕。セリフらしいセリフもありません。雰囲気で読んでください。※以前にTwitter連投したものの微調整になります。
    独白かつてより、その姿は余りに目にする機会が多かったものだから──天神像ですら"其れ"を模すものとなっている。石錠を眺め、諦めることなく解析を試みようとするあの方の肖像。”忘れていいのだと言われたのだがな”と、あの方は昔呟くと、自嘲の様に笑ったことを覚えている。
    私の記憶の始まりでは、まだその姿を見ることはなく……あの方は敵だらけの大陸で弱く脆い人々の守護者として、恐るべき力を震い続けた。それこそがあの時代に求められた神の強さだったけれど、山岳の奥で静かに暮らしていた幼い私は畏怖を抱いてしまい、訪れる彼に自ら声を掛けることなど、しばらく出来なかった。
    留雲真君の足もとに隠れ、震えている私を困った顔で見下ろすあの方の姿を忘れられない。──今のように、何気ない言葉を口に微笑み頭を撫でてくれるような所作はあの頃には身に付けておられなかった。勿論、終わりの見えない戦いに身を投じ槍を握るあの時期に、穏やかさを得る余裕などなかったはず。
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