【ダンエイ】夢【全年齢】 最後に見たのは、じゃあな、と大きな口で大声を出す大柄な男の両手を掲げた巨躯。それから、一年近く。ようやく得たエージェンシーへの切符となる身分と履歴書を手に、エイムスは平穏な一般人としての日々を繰り返している。面白みもない単調な毎日を、だ。
おそらく、そのせいだろう。自己分析しながら踏みしめた床は、やけに柔らかく弾力があって、今の己が真っすぐ立っているのかすら甚だ自信がない。周囲は、ひどくぼやけているが、かろうじてどこかの海岸であることはわかった。海の青と茶色い砂。作り物じみた波の音が、引いては押してを繰り返す。登場人物は、エイムスともうひとり。向かい合う影が、にかりと口を開いた。
『好きな女ができた』
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