仙人徐庶と姜維と太公望のはなし(かきかけ)ぼそぼそと話し声が聞こえた気がして、姜維は目を覚ました。──いや、眠っていたのかどうかすら定かではない。ただ、頭がぼんやりとして、気を失っていたかのようだった。
うっすらと目を開くと、見慣れない木造の天井が見える。今自分がいるのは、小さな庵か何かのようだ。話し声は、その外から聞こえているようだった。
「──しかし、貴公が……ここまでするとはな。」
「……殿、どうかこの件は──」
「分かっているさ。今回は…あの男に免じて……特別だ……」
会話が途切れた後、ざり、ざり、と砂を踏む音がして、一人が立ち去ったようだった。
姜維は朦朧とした意識の中、自分の記憶を手繰り寄せた。
師と仰ぐ諸葛亮孔明亡き後、仕えていた国は滅んだ。それでもなんとか国を再興させようと、敵だった鍾会と手を組んだ。しかし、進軍の途中、味方であるはずの兵士が槍を持って襲い掛かってきた。もう戦はたくさんだと叫ぶのが聞こえた。
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