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    okeano413

    @okeano413

    別カプは別時空

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    甲操 ぼくのおおかみ

    ##甲操

    2021.11.18
    ご投票ありがとうございました!
    https://twitter.com/okeano413/status/1459441361573548033t=3wjk5zmVy8JK6Gx3HPwVhg&s=19
    「送り狼」

    「送り狼って知ってる?」
     傾けすぎたカップの中身を、いま以上含まないように口から離して飲み込む。こぼさないよう手で口をおおって無理やりそうしたせいで、抵抗むなしくむせてしまった。
     この慌て方、気管に入っちゃったかな。
    「なん……だ、ど……っ」
     なんだよ。誰に。どこで。
     疑問に答えてあげるのは、乱暴に口元をぬぐって涙目で睨んでくる背中をさすりながらにするとしよう。いつもお世話してもらってばかりだから、面倒を見る側になるの、新鮮だ。
    「鈴奈の好きなメロドラマで「送り狼には気をつけることね」なんてセリフがあったから。僕たちには当てはまるのかなって気になってさ」
    「絶対しない」
     意味、知ってるんだな。あのあと鈴奈が「きゃあ」と声を上げる場面も続いたから、概要は僕も把握してる。目当ての子を、優しいふりして安全なところまで送り届けてから、隠してた悪い顔をさらけ出して食べちゃう人のこと。
     いつもすごくやさしくて、セックスの時は怖い顔して僕を食べちゃう甲洋に似合うんじゃないか。想像してしまったからにはやってみてほしい。
     甲洋がキスを許してくれる場所といえば、ここ楽園か、人の気配のない夜の浜辺くらいで、おかあさんの家ではちっとも触ろうとしてくれない。同じベッドで眠るのだって、毎回さんざんおねだりしなきゃいやがられる。別の家になっただけで、屋根の下っていうのは同じなのに。僕からくっつくのは拒まないくせにさ。
    「今日、おかあさん遅くなるんだって。送り狼、してみてよ」
    「しないよ……。シーツ洗ってるの見られたらなんて言い訳するつもり」
    「感動する話聞いた大泣きした、とか?」
    「通じるわけないだろ。わがまま言うなら送ってかないから」
    「なんで! 今日は手、つないでってくれるって約束でしょ!」
    「わかってるよ。うるさいな」
     はーあ、なんて文字で見えそうなほど大きなため息をついて、差し出した手で立たせてくれる。そのまま出口に向けて振り返った甲洋の右隣へ小走りで収まると、腰をぐいっと抱き寄せられる。
     やっぱりしてくれるってこと? 出発地点で襲われるのも、送り狼に入るのかな。
    「目、つむって」
    「ん」
     キスはしてくれるらしい。宣言するのって、定義的にはどうなんだろ。
    「向こうでどんなふうにされたいのか知らないけど……」
     腰に回したのと反対の手でやらしくおなかと胸とをなぞり上げて、その手に顎を上げさせられて。いつものように背伸びしようとすると、ちょっと強引に持ち上げられてしまった。目を閉じたまま、支点を求めて服を掴む。
     視覚を閉じているからか、甲洋の呼吸がよく伝わる。ここにちょうだいとちょっと唇を突き出すと、覚悟を決めたように息を短く吸って、上下から挟むようにキス、してくれる。
    「……ここでやるのが精一杯」
     どうせだから、舌、絡めてやろ。そう思って押し広げようとしたのに、成功する前に足が床につく。もったいない。離せないように抱きついておけばよかった。
    「……いくじなし。もっとちょうだい。続きは向こうでしてくれるの?」
    「やだよ、やるならうちでいいだろ」
     足首を上げて僕からしようとしても逸らされる。背中が名残惜しそうだ。これから離れるのに。明日一日会えないのに。やらなきゃよかった。にじませたままゆっくり深呼吸して、生まれたらしい欲を抑えようとしてる。
     かわいいなあ。ばればれなのに、隠そうとするところがすごくかわいい。
    「じゃ、お泊まりを許してくれるのは、甲洋もセックスしたい日ってこと?」
    「……いつもそうってわけじゃ……」
    「たまにはそうなんだ。へへ」
    「…………」
     わあ、怖い顔してる。すねてるだけだろうけど、あんまり言い続けると一人で帰れって言われそうだ。いじわるはここまでにして、とっておきの言葉で機嫌を直してもらおう。
    「ね、ね、耳貸して」
    「なに」
    「ほんとはね、泊まってくるって言ってあるの。だから今日も僕のこと、好きにしていいよ」
     びっくりして、それから両目を細めて、それからすぐに、へえ。という顔。途端に欲を解き放った目はちょっと怖い。早まったかな。でも、求めてる熱をくれそうだ。
    「明日、何時に起きたい?」
    「甲洋のいい時に?」
    「ふうん」
     お店の鍵はもう締めてある。カーテンだって紐をほどいてるし、いつだって私室へ行ける。焦茶色の扉をくぐればすぐにでも。
     もう一度、迎え入れるために見せてくれる手のひらに触れようと近づくと、待ちきれないみたいに抱き上げられた。今度こそきゅうっと抱き着くと、ステップを踏むみたいに上下に揺らされる。
     おかあさんの家じゃ絶対してくれないこと。どうしてあそこじゃやなんだろ。甲洋が触ってくれるなら、どこでだって構わないのに。
    「じゃあ、起こす代わりにどんなふうに触られたいか、どこが気持ちいいかとか、全部教えてくれる?」
     こうなったら甲洋は止まらない。お店の磁器は茶渋がつくからすぐに洗えっていつも言うのに、自分のカップを放置したまま僕をベッドへ連れて行く。
    「焦らしたり、いじわるしない?」
    「しないよ。それともされたいの?」
     甲洋がしてくれるなら、どっちだって嬉しい。そう、思ってるのも全部知ってるのに、聞きたがるところもかわいい。
    「甲洋がしたいこと、なんでもしてよ。全部うれしいし、ほしいから」
     顔は見えないけど、笑っているのがよくわかる。僕の恋人に似合うのは、送り狼じゃなくて、迎え狼だったかも。
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