「とびきりかわいいおとこのこ」の二人
幼馴染×歳の差
2022.12.16
はい、と渡されたのはジャータイプのリップクリーム。保湿目的のリップクリーム自体は、おつかい中だった操に追加で頼んだものだ。
残念ながら、目当てのものとは違っているのだけど。
「俺、いつもスティックかチューブのを使ってるよね?」
まさか覚えてないのか、と伺ってみてもちっとも悪びれてない。形状まで指定しなかったからしょうがないとはいえ。
ジャータイプって、見かけの割に量が少ないし、毎度指や道具が汚れる手間がある。高保湿だからと試したことはあるけれど、結局楽に使えるタイプが俺には合ってる。
「えー? おこ?」
「おこじゃないけど」
さて、購入して早々だけど返品しに行かないと。後日に回したらたぶん忘れる。使わないものを仕舞っておいても勿体ない。
もう少し腹も空かせておきたいし、気分転換を兼ねて歩こうかな。目的を果たしてやれないリップクリームを片手に、ソファから立ち上がろうとすると、下方からさっとひったくられる。
「でもさあ、これなら」
なんだよ、と見ていると、手際よく開封して、半透明のクリームを薬指にすくう。
あ、もう返せないじゃないか。操が使うんならいいけど。眺めていると、唇に塗り付けて、なにやら企み顔で笑った。
「くち、とじててね」
なにも言ってないけど。唇をつやつやにした操に、おいでおいでと誘われて身を屈める。案の定というか、腕を絡めつけて、そのままキスされる。
「んむ」
「んー、ん」
引っ張られるままソファへ雪崩れ込む。押し倒した、っていうか、押し倒させられたっていうか。一生懸命、口の端まで行き渡るように、角度を変えては唇を押し上げてくる操は、俺の腕の中にいるくせに、自分が捕まえたんだって顔で笑ってる。
「こうしたらさ、甲洋くんも使い続けられるんじゃない?」
と、言われても。挟まれて広がったクリームが生ぬるくって気持ち悪い。まだらになったそれをべろりと舐め取った。これじゃ、保湿の意味がない。
「あっ、舐めたらだめだよ。またつけたげる」
半端な姿勢じゃ息がしづらい。乗り上げる間に、半透明のルージュを引いた操からもう一回。塗ってあげると言うくせに、クリームをちゅ、と吸い取って離れる。
「ね。いいアイデアでしょ」
「……評価は成果次第かな」
俺がどうってより、操がしてみたかっただけだろ。崩れたビニール袋から俺の愛用リップが覗くのには気付かないふりで、とっくにクリームの残らない唇を舌でこじ開けた。