三途のほとりでお茶会「何してんだよお前ら」
マトリフは目の前の光景を信じられない気持ちで見ていた。円卓に並んだお茶と菓子。そしてそこに座ったカノン、ガンガディア、そしてバルゴート。
「見てわからないのかい。お茶会だよ」
カノンはカップを手にしている。中に入っているのは紅茶だろう。いい匂いがこちらまで届いている。
マトリフはカノンの隣に座るガンガディアに目をやる。大きな体を器用に丸めて椅子に座っているが、椅子は無事なのだろうか。
「なんでお前もいるんだよ」
「通りかかったら呼んでいただけたのでね」
お上品にカップを持ったガンガディアが言う。よくそんなに小さなカップが持てたな。
「美味しいお茶だ」
「口に合ってよかったよ」
ガンガディアとカノンは和やかに会話している。茶葉がどうとか、この菓子が合いそうだなどと会話が弾んでいる。
そして何よりわからないのは、ここにバルゴートがいることだった。バルゴートはスコーンを半分に割ってジャムをたっぷりと乗せている。
「突っ立っていないで座ったらどうだ」
バルゴートは一つ空いた席を視線で示す。マトリフはその席に手を掛けてから、首を横に振った。
「おかしいだろ。あの世から化けて出ちまったのか?」
そう言ってから、どこからか水音がすることに気付いた。聞き慣れた海の音ではない。一方方向へと流れ続ける水音は河の音だ。その音に気付いた途端、円卓の向こうに大きな河が流れているのが見えた。
「……まさか、お迎えってやつか」
先に死んでいった者たちと、境界線の河。対岸は見えないほど遠い。マトリフは円卓に座る三人を順番に見た。
「迎えになど行っていない。ただ待っているだけだ」
「急かしてはいない」
「それよりアンタ、呼ばれてるんじゃないのかい」
カノンがマトリフの背後を指差す。その先に何も無いように見えるが、言われてみれば誰かに呼ばれているような気がした。
「まだ来るべきじゃない」
カノンは手を伸ばすとマトリフの体を押した。マトリフの体は傾くと、崖から落ちるように下方へと落下する。
円卓では三人がお茶の続きを楽しむ姿が見えた。あの三人で仲良く出来るものなのかと不思議に思っていると、突然に目が覚めた。
「よかった師匠、生き返った」
ポップの涙声に、やはり先程見たのはあの世の入り口だったのかと思う。いい加減に向こうへいってもいい気がするが、必死に呼び戻す弟子がいるうちはいけそうにない。
マトリフはポップの頭を撫でながら、薄れていくあの世の光景を思い返す。あの三人がお茶会ってなんなんだよ。